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異世界転生したら知識神のスキルがチートすぎて、 冒険者なのに国家と神と魔王に目をつけられました  作者: 蒼月アルト


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第3話 異物としての目覚め

ギルドを出た瞬間、外の空気がやけに重く感じられた。


「ねえねえ、レオン!」


背後から、元気な声。

ミルフィ=ラグナールが、尻尾を揺らしながら並んでくる。


「これからどうするの?

初仕事、受ける?」


「……その前に、少し街を見たい」


「街?」


不思議そうに首を傾げるミルフィを横目に、俺は歩き出した。


ギルドの外は、活気がある。

露店、呼び込み、冒険者の笑い声。


だが、少し路地に入るだけで――

空気は一変する。


崩れかけた建物。

汚水の流れる溝。

物乞いの子ども。


(……さっきまで、ここにいたんだよな)


スラム街。


数時間前まで、俺はここで

“魔物に襲われかけるだけの一般人”だった。


《アーカイヴ・ロジック》が、勝手に反応する。


視界に、数値が浮かぶ。


栄養状態:不足

平均寿命:短

死亡率:高


――見える。


見えてしまう。


「レオン?」


ミルフィが、不安そうに覗き込む。


「顔、暗いよ?」


「……いや」


俺は視線を逸らした。


「なあ、ミルフィ」


「なに?」


「この街の人たちは……

冒険者にならないのか?」


ミルフィは、少し考えてから答えた。


「なれない人も多いよ。

登録料、装備、コネ。

それに――」


言葉を選ぶように、一拍置く。


「才能、かな」


才能。


それだけで、線が引かれる。


(才能がない=助からない)


俺は、拳を握った。


(じゃあ、俺は?)


才能があったわけじゃない。

努力してきたわけでもない。


ただ――

神のミスで、選ばれただけだ。


路地裏で、騒ぎが起きていた。


怒鳴り声。

泣き声。


近づくと、冒険者風の男が、

少年の胸倉を掴んでいる。


「金が足りねえって言ってんだろ!」


「で、でも……」


少年の手には、粗末な薬草袋。


《アーカイヴ・ロジック》が、即座に解析する。


薬草:低品質

効果:軽度回復

市場価値:ほぼゼロ


(……売れない)


少年は、助かろうとしているだけだ。


「やめろ」


気づいた時には、声が出ていた。


冒険者が振り向く。


「は?」


俺とミルフィを見る。


「なんだ?

ガキの仲間か?」


「……離せ」


一瞬、世界がスローモーションになる。


この男の筋力。

反応速度。

武器の振り。


――最適解は、ある。


だが。


(……やらない)


ここで殴れば、終わる。

でも、それは“解決”じゃない。


「ちっ」


冒険者は、舌打ちして少年を突き飛ばした。


「運が良かったな」


去っていく背中。


少年は、震えながら立ち上がる。


「……ありがとう」


その声は、か細かった。


俺は、何も返せなかった。


(助けた、とは言えない)


この街全体を、

俺一人で救えるわけじゃない。


数式は見える。

最適解も出る。


でも――

答えがない問題も、確実に存在する。


宿に戻る途中、ミルフィが言った。


「レオンってさ」


「ん?」


「強いのに、全然偉そうじゃないよね」


褒めているのか、分からない。


「普通、あれだけできたら

もっと調子乗る人、多いよ?」


俺は、少し考えてから答えた。


「……強いだけじゃ、意味がないって

さっき分かったからな」


ミルフィは、きょとんとした。


「ふーん?」


でも、すぐに笑った。


「よく分かんないけどさ!」


尻尾が揺れる。


「一緒に冒険しよ!

レオン、頭いいし!」


頭がいい。


その言葉が、妙に重く感じた。


(知識は、力だ)


(でも――)


力は、

必ずしも人を救わない。


宿の前で、俺は空を見上げた。


異世界の空。

星の配置が、微妙に違う。


《アーカイヴ・ロジック》が、

星の運行すら解析しようとする。


俺は、無意識にそれを抑えた。


(……全部、見る必要はない)


この力を、

英雄になるためには使わない。


少なくとも――

今は。


そう決めた瞬間、

胸の奥で、何かが静かに動いた。


――俺は、この世界では

“異物”なんだ。


そしてそれは、

いずれ無視できない問題になる。


だが、まだ。


今はただ、

冒険者として、一歩を踏み出す。


明日、

初めての正式依頼が待っている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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