表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したら知識神のスキルがチートすぎて、 冒険者なのに国家と神と魔王に目をつけられました  作者: 蒼月アルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/14

第2話 銀尾の斥候と異常値

――なに、今の。


あたし、ミルフィ=ラグナールは、木箱の陰から目を丸くしていた。


スラム街の路地。

いつもの巡回コース。

ゴブリンが三体出たから、助けに入ろうとした――その瞬間だ。


石が、飛んだ。


ただの石ころ。

投げたのは、路地の真ん中に立ってた、ボロ服の人間の男。


それが――

ゴブリンの喉を、正確に貫いた。


「え?」


思わず声が漏れた。


二体目、三体目。

男は逃げない。

叫ばない。

怖がらない。


まるで――

最初から、勝つと分かってるみたいな動き。


(なにそれ……)


あたしは獣人だ。

斥候だ。

速さには自信がある。


でも、あの人間の動きは“速い”んじゃない。


無駄が、ない。


ゴブリンが倒れきったところで、あたしは飛び出した。


「うわー! 今の見た!?」


声をかけると、男は少しだけ肩を揺らした。


……びっくりした?

いや、違う。


今さら気づいた、みたいな顔。


「すごいね! 君、新人?」


「……ああ、たぶん」


歯切れ悪っ。


「冒険者? それとも傭兵?」


「いや、まだ何も」


まだ?

“まだ”って言った?


あたしは一歩近づく。

尻尾が勝手に揺れた。


「名前は?」


「レオン。レオン=アルケイオン」


変わった響きの名前。


その時だった。


――ぞくっ。


背筋に、嫌な感覚が走った。


(……ん?)


あたしの勘が、警鐘を鳴らしてる。


この人、

強いとか以前に――変。


「ねえレオン」


「なんだ?」


「さっきの戦い、どうやったの?」


レオンは少し考えてから、答えた。


「……たまたま、かな」


嘘だ。


獣人の嗅覚は、匂いだけじゃない。

“空気”が違うのが分かる。


この人、

戦闘中――焦りの匂いが、まったくしなかった。


「ふーん?」


あたしはにっと笑った。


「じゃあさ、ギルド行こ!

新人なら登録しないとね!」


「ギルド……」


「うん!

この辺、魔物増えてるし、一人は危ないよ?」


本当は――

一人で一番危ないのは、あたしのほうだって分かってた。


でも、放っておけなかった。


ギルドへの道中。


レオンは、周囲をよく見ていた。

人の動き。

屋根の高さ。

道の幅。


(……索敵?)


いや、違う。


全部、同時に見てる。


「ねえ、レオンってさ」


「ん?」


「前から強かったの?」


「いや。今日が初日みたいなものだ」


……やっぱり変。


ギルドの建物が見えてきた。


石造りの大きな建物。

冒険者たちの怒号と笑い声。


レオンは、少しだけ足を止めた。


「どうしたの?」


「ここ……」


視線が、宙を彷徨う。


「人、多いな」


「普通だよ?」


でも、レオンは額を押さえた。


一瞬。

ほんの一瞬だけ。


顔色が、悪くなった。


(え?)


次の瞬間には、元に戻っていたけど。


(今の、なに?)


「……大丈夫。行こう」


ギルドに入ると、

視線が集まった。


理由は簡単。


スラムの新人+獣人斥候の組み合わせは珍しい。


受付の女性が声をかける。


「登録ですか?」


「はい! この人、新人!」


レオンが前に出た。


「Fランクでお願いします」


即答。


(あ、これ“分かってる人”だ)


普通、新人は見栄張る。


でもレオンは違う。


「では、簡単な適性確認を」


水晶球が出された。


魔力測定だ。


レオンが手をかざす。


……一瞬、光る。


次の瞬間。


水晶が、嫌な音を立てた。


「……?」


受付が眉をひそめる。


数値板が表示される。


魔力量:測定不能

反応属性:不明

演算干渉:――


(え?)


受付が慌てて水晶を引っ込めた。


「し、失礼しました!

初期不良ですね!」


周囲の冒険者たちは笑ってる。


でも。


あたしは、笑えなかった。


(初期不良じゃない)


あの時の感覚。


ゴブリン戦。

道中の視線。

さっきの頭痛。


全部、繋がった。


――この人。


この世界の“枠”に、収まってない。


「登録完了です。Fランク、レオン=アルケイオンさん」


ギルドカードを受け取ったレオンは、少しだけ苦笑した。


「……やっぱり、目立つか」


その呟きが、なぜか胸に残った。


(目立つ、じゃない)


(――逸脱してる)


あたしは、決めた。


この人から、

絶対に目を離さない。


たぶん――

とんでもない冒険が、始まる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ