番外編短編・秘密の恋と翌日のカレー
「ふふふーん!」
葵はご機嫌でスーパーで買い物中だった。今日は夜、敦が家にやってくる予定なので、カレーを作って待っている予定だ。
といっても、芸能界にいる敦は多忙だ。付き合っているとはいえ、長時間派会えない。まとまった休みも来年以降まで取れないらしいが、ワガママも言えない。最近は敦は福祉関係のイベントやコラムの活動も多い。敦との付きあいも楽しいが、こうして広く仕事ができる今も嬉しい。自分のことのようにご機嫌になり、スーパーでの買い物も終わった。
「あれ?」
しかし、スーパーを出た時だった。誰かからの視線を感じた。振り返ると、電柱の影にカメラを持った記者がいた!
すっかり忘れていたが、もし敦との関係がスキャンダルになってしまったら?
葵の顔は真っ青だ。すぐ敦と連絡をとり、今日のデートは中止になってしまった。
「なんで記者なんているんだろ。絶対バレないと思っていたのにー」
その後、葵は文句を言いながらジャガイモやニンジンを切っていた。結局、カレー派作っていたが、今までの危機感の無さにも愚痴が出そうだ。
「絶対バレないようにしないと……」
ずっと浮かれているわけにはいかないらしい。秘密の恋だ。リスクもあるが、なぜか覚悟だけはあった。
そして何とかカレーを作り終え、一人で食べた。我ながら野菜がゴロゴロとし美味しかったが、心のそこから笑顔になれない。改めて敦と付き合っていいのかもわからず、頬のあたりが引き攣ってしまった。
こうしてカレーもあまり食べられず、タッパーに入れて保存した。翌日のカレーは美味しいとう噂もあったが、敦と一緒に食べられないと意味がないと思った。
「カレーがいくらおいしくても、あっくんと会えなかったら意味ないし」
その上、翌日は敦の事務所から、厳重注意もされてしまった。わざわざ社長が電話に出てきて、スキャンダルは御法度だと釘を刺された。
「もしスキャンダルになったら、葵さんに全責任をとってもらいますからね」
そんなことまで言われた。葵の顔は青くなったが、その時。敦が家にきていた。仕事の合間、無理いって来てくれたらしい。
「あんまり長居できないけど」
「あっくん……」
ちょっとでも顔を見られたらだけで嬉しい。ほんの一瞬だったが、手土産にカレーも渡す。
「ありがとう。翌日のカレー? 美味しいのじゃん!」
敦の笑顔をみていたら、葵の憂鬱さは飛んでしまった。
翌日のカレーがおいしいかはわからない。結局、今日もひとりでカレーを食べるだろうが、今は敦の顔を見られるだけで十分だった。




