番外編短編・その後のふたりとキーマカレー
ある秋の日、敦はキッチンに立ち、キーマカレーを作っていた。本格派ではない。カレールウで作る。しかも葵の家のキッチンで。
あの後、正式に葵と付き合うことになり、こっそりと家にいた。合鍵も作った。
約一か月以上、ここで暮らしていたので、我が家みたいに馴染んではいるが、恋人同士になって初めての訪問だ。少し緊張しながら、玉ねぎのみじん切りを作る。目がしょぼしょぼになり、少し緊張も薄れてきた。
「あっくん、カレーできた?」
「まだまだ。玉ねぎ刻んでいるとこ」
「私がすることある?」
「じゃあ、トマト切ろ!」
「オッケー!」
二人でキッチンに立ち、ワイワイと調理をしていく。楽しい。敦の口元は緩んでしまう。
今は芸能界に復帰し、大好きなダンスができた。仕事も他数決まっていたが、なんか日々物足りなかった。決定的なのは事務所の社長とレトルトカレーを食べたとき、ホットガイ化した時だった。葵の存在の大きさを感じ、急いでホットチキンを片手に告白しに走った。
自分にもこんな熱い思いがあるとは知らなかった。葵と過ごしながら、知らない自分にであって戸惑う。
そんなことを考えていたら、あっという間にキーマカレーができた。ほとんと水も使わず、野菜の旨みだけで出来たキーマカレーの匂いは、濃く、刺激的だ。
「あっくん、美味しそう!」
隣には無邪気に喜ぶ葵の笑顔。その無邪気な笑顔はキーマカレー以上に敦の何かを刺激してしまう。
「か、かわいい子猫ちゃん!」
「は!? 今、ホットガイ化!?」
なぜかホットガイ化時のセリフを口走り、葵は腹を抱えて大爆笑!
「あっくん、紳士だから、そのギャグ似合わない!」
「や、ギャグじゃないんだけど」
敦の顔は色んな意味で真っ赤だが、皿の上にはよくできたキーマカレーがある。
久々に葵と二人で食事できる。そう思うと、楽しみで仕方ない。笑っている葵につられ、敦も微笑んでいた。




