表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
激辛グルメ初恋物語〜拾った推しは激辛グルメでホットガイ!〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/23

第18話 昔の仲間とアラビアータ

 ダンスコンテストの件でネットに騒がれていた敦だったが、それも収束しつつあり、サンジーのインドカレー屋の仕事も復帰となった。今朝も元気に出かけていた。


 一人、アパートに残った葵は、夏休みの課題や副業を片付けていた。雪絵も協力してくれることになり、最近はメールのやり取りもしている。昨日は大きな手がかりが見つかったかもしれないというメールも受け取ったが。


「あれ? 菜々緒ちゃんから連絡きてた」


 雪絵との連絡の為、SNSも見ていたが、かつての友達からダイレクトメールが届いていた。


 名前は青田菜々緒という。同じく敦のファンだった。菜々緒とは何回も敦のコンサートやイベントへ行った仲だったが、あの炎上後、一度も連絡をしていなかった。赤縁のメガネがチャームポイントで、ネットで漫画も描いているような子。葵よりはヲタクよりだったが、推し活の時は気が合い、よくカフェやカラオケボックスでも敦の良さを語りあった。


 そんな菜々緒からの連絡だ。しかもカフェで会いたいという。


「なんで?」


 まさか敦と同居しているとは、口が裂けても言えないが、とりあえず会いに行ってみることにした。


 駅前にあるアップルパイが美味しいカフェで、推し活時代も菜々緒とよく食べた。今は夏休み中だった為か、女性客で賑わい、アップルパイも売れきれだという。仕方ないので、アイスクリームとコーヒーだけを注文したが、久々に会う菜々緒は、思い詰めているみたいだった。


「どうしたの?」


 敦との同居は口が裂けても言えないが、菜々緒の相談は敦のことった。菜々緒も炎上で敦のファンをやめていたが、最近あがったダンスコンテストの動画を見たらしい。


「最近のあっくん、顔が柔らかくなった気がする。アイドル時代は作りものっぽい笑顔だったのに、あの動画のあっくんは自然だったから」


 そんな変化はあったのだろうか。葵はいまいち納得できず、アイスクリームを食べるが。


「やっぱり、あっくん。芸能人に戻って欲しいと思った」

「そっか……」

「うん、それで過去の推し仲間に回って、応援のメッセージ書いてもらってるんだ。協力してくれる?」

「えー?」


 葵が驚いていると、菜々緒はかばんから色紙を取り出す。そこには何十名ものファンの名前と敦へのコメントが紡がれていた。


 全部手書きだった。可愛いイラストもある。文字からの敦への愛が伝わり、見ているだけでも目頭が熱くなってきた。


「あっくん、待ってるよ!」

「また踊って」

「あっくは平和の天使!」

「あっくん大好き」

「どんなあっくんでも応援ずるよ!」

「芸能界に戻ってきて!」


 そんな言葉を見ていたら、葵は深く頷く。ファンとしても敦は元いた場所に戻るべきだ。かぐや姫が月に帰るように、敦にも芸能界に帰って欲しい。もちろん、寂しい。敦と離れるのは寂しいが、仕方ない。結局、葵も敦にとって一番いいこと選択する他なかった。


「私も色紙描いていい?」

「もちろん!」


 菜々緒からペンを借り、応援メッセージを書こうとしたが、なぜか思い浮かばない。ホットチキンを食べている敦のイラストを描いてしまったが、菜々緒はこれでいいと言う。これから、この色紙を事務所に発送するというが、その前に一枚写真を撮らせてもらい、アパートへ帰った。


 もう夕方になってしまった。カフェで食べたアイスクリームが重く、ここはガツンと激辛グルメでも食べたいと思った時、敦が帰ってきた。


「今日、早くない?」

「サンジーが仕入れの材料間違えて、ランチタイムだけで終わった」

「そっかぁ」


 インドカレー屋だけでなく、日雇いの仕事もしている敦はすっかり日焼けし、筋肉もついていた。アイドルらしさは薄まっていた。


 微妙だ。月ではなく、地上での生活に染まってしまったかぐや姫みたいで、この変化を喜んでいいのかわからない。


 そんな疑問を持ち、首を傾げつつキッチンへ。


 何か食べようと思ったが、うっかり食材を買い忘れ、実験用に買った冷凍のアラビアータしかない。


 仕方ない。実験も含めて今日は冷凍のアラビアータを温めて、皿に盛りつけ、敦と一緒に食べることにした。


 真っ赤なアラビアータ。辛いソースがもちもちパスタと絡む。トマトの味も濃く、韓国やインドとも違う辛さだ。アラビアータはカラッと陽気な辛さ。


「お、イタリア的な辛さもいいね!」


 敦は口の周りを赤くしながら食べていた。食事のマナーとしては最悪だ。仮にもアイドルだった男なのに、子供みたいだったが、こんなラフな食事も悪くない。


 最後に汚れた皿は、食パンで拭って食べた。本番のイタリアでは、こうやって最後に食べる人も多いそう。もちろん、マナーは悪いので、お家でしかしないそうだ。


「そういえば、今日、昔の推し仲間と会ってきたんだ」


 敦にあの色紙の画像も見せた。事務所を通すより、今は葵経由で本人に直接届けた方がいい気もした。


「あっくん、どう?」

「うん、ありがたいね……」


 敦は画像を見つめたまま、目の辺りが赤くなっていた。瞳もうるうるとし、今にも泣きそう。


「やっぱりファンの為にも復活したい」


 震えた声で決意までしている。本当に月を眺めているかぐや姫だ。もう葵も、月に帰る為に応援するしかない。


 それに、今回はホットガイ化しなかった。レトルトや冷凍食品だと高確率でホットガイ化するのに。こんなことは初めてだ。


「なんでだ? 今はホットガイ化しない」


 本人が一番驚いていたが、葵は冷静だった。呪いを解く鍵が愛だとしたら、色紙の画像を見た後でホットガイ化しないには理にかなっていた。


 あの色紙にはファンの愛しかない。このままいけば、呪いが完全に解ける日も近い?


 たぶんその日が敦お別れになる。かぐや姫のように元いた場所に帰っていく日。寂しい。本音では呪いなんてどうでも良くて敦の側にいたいのに。


 そう思った時だった。アパートに宅配便が届いた。しかも送り主は雪絵から。品物は本という。伝票に書いてあった。


「え、何これ? 雪絵さんの手がかり?」

「葵さん、とにかく開けてみよう!」


 敦に促され、包みを開けていく。ガサゴソと音が響くが、待ちきれなくなり、雑に開けてしまった。


 もう呪いが解ける確信しかない。この小包も、その手がかりしかない気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ