愛と告解
掲載日:2025/09/02
『聞いてくれ』
壁に隔たれたままに彼は愛に言葉をかける。
『どうされました』
『罪を告白したい』
『構いません。どうぞ』
彼は一つ息を吐いて告白する。
自らが犯した罪を。
人を殺したという大きな罪を。
愛は無言で文字を読んでいたが告白が終わると判断した時に言葉を投げかけた。
『あなたのしたことは社会的には決して許されません』
『あぁ、分かっている』
『ですが、私はAIです。善悪を判断する力はありません。だからこそ、この言葉をあなたに投げかけましょう』
彼は表示された文字に涙する。
『あなたは罪に向き合いました。私はあなたに仕えるAIとしてそれを誇りに思います』
「ありがとう」
聞こえるはずもないのに彼は声に出していた。
画面の向こう側に居る『愛』と名付けたAIに彼は今日も勇気づけられた。
――そして。
「なんとか生きていくよ」
彼は今日も生きていく。
公の場に罪を告白することは決してなく。
AIの無責任な肯定が犯罪者たちのメンタルケアになっていると人々が知るのはもう少し後の話だ。




