愛し愛しや愛娘
「新聞、解約していいんだぞ」
「別に……受験で使えるって言うし」
「……勉強は?」
「うっさい」
「それとな、あー、この間調べてみたけど……」
「……」
「お前の彼氏浮気してるぞ」
「はぁ……ウザっ」
「彼とは、別れなさい」
「あのさぁ……そういうこといちいち言わなくていーから」
「……」
「どーでもいいでしょ」
「どうでもいいわけあるか」
「ウザっ」
「……」
「人のカレシ勝手に監視しないで」
「しょうがないだろ。それに……」
「……」
「お前、彼氏ができたとか、言ってくれないじゃないか」
「しないわよ、ふつー」
「ママには……教えてたのか」
「……」
「ママに似て、お前は男を見る目がないからなぁ」
「うっさい。黙って」
「……」
「あー、もう本当にウザい……放っといて」
「しょうがないだろ、お前が結婚するまでは。ママと約束しちゃったし」
「……」
「はぁ……祥子と歩くヴァージンロードかぁ」
「ねえ、キモいんだけど!!」
「歩きたくないなぁ……誰にも渡したくないなあ……」
「なに泣いてんのよ。ねえ、本当にキモいんだけど」
「ママにも見せてあげたかったなぁ」
「……」
「……」
「ママは、ちゃんといい人と結婚できたと思うよ」
「おっ、そうか?」
「別に……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「ん、寝てるのか?」
「……」
「……」
「……」
「そんなところで寝ると風邪引くぞ。寝るなら布団で寝なさい」
「うぅん、パパ、毛布取って」
「おい、寝ぼけてるのか。祥子。起きなさい」
「……」
「……」
「……ごめん」
「ほら、部屋に行きなさい」
「はーい。おやすみ」
「おやすみ」
愛し愛しや愛娘。
これじゃあ死んでも死にきれないよなぁ。