カタルシス欲しさにめちゃくちゃする婚約破棄事件〜引っ叩き投げつけ書かせて突き詰めバリカンを唸らせる〜
婚約破棄ものが好きな私の結末はこうだ。
「婚約破棄してやる」
「はい」
パアアアアアンンンン
鈍い音と共に婚約者をひっ叩き、壁まで吹き飛ばしてみせた。
「ぶへらああああたあ!!!」
「はい」
パリリリリンーンンンン
近くにあった空のワイン瓶を五本ほど相手に投げつけ、立てない様にした。
今立ち上がっても、ろくに歩けなくしてやった。
「なにじゅる!!!」
なにをすると言いたいのだろう。
そのアホなことしか言わない口を、話せなくさせたことは慈悲だと何故わからないのだろうか。
「はい」
センスをひらりとさせると控えていた執事達がずらりと並ぶ。
「契約書をここへ」
「「「はっ!!!」」」
自身と、婚約者の婚約関係を終わらせる書類をいつでも準備しておいた。
ふふ、と思わず笑う。
「サインせよ」
センスをピッと相手に向けて差し出す。
婚約破棄したかったのだろうとワインボトルを掲げながら、にこりと笑う。
それに戦慄した元婚約者は、震える手でサインする。
「ふふ、面白い」
それを確保し、浮気相手思われる女にもサインさせる。
「あなたにも賠償金を払わせますわ。没落ね。ご苦労様」
クスッと笑い、全て終わらせてこの男の父親の家にまで、手紙を発送させる。
泣き出す浮気相手令嬢。
泣いていても許されるのは、十二歳くらいまででは?
バッシシシシイイイイインンンン
激しい音をたてて、叩かれた令嬢は令息の隣に吹き飛ばされる。
「がはああっ!!」
令嬢は呻きながら、気を失う。
「やって」
「はっ!」
令嬢の毛と令息の毛を、刈り取る。
どちらも全く動けないので、簡単即日。
ビイイインンン
「あーっうーうーうううう」
令息はまだ、意識がある故に這って逃げようとする。
クスクスと笑えば、バリバリと進むバリカン。
うちの領地で開発されたので、とても馬力が強い。
「あああああ」
無くなっていく毛。
「うふふ!これよこれ!」
こういう時のためにお金を貯めて、だれにも責められない様に動き続けてよかった。
前世、中毒並みにざまぁものを読み漁ったのだ。
死角はない。
「さて、皆様には高級ワインを奢ります」
場を混沌とさせ、高級なものを振る舞えばころりと忘れてもらえる。
この国の税収がどれほどなのか、知らないものはいないから。
支えていると言っても過言じゃない。
笑えば、みんなも笑う。
この愚かな婚約者を選んだのは、単に婚約を打診される煩わしさを避けるための、男避け。
でも、選んであげたからちゃんとお小遣いくらいはあげていた。
なのに、契約を破ってこのような真似をしたことは、楽しませてくれたのでよしとしてあげる。
もちろん、後日浮気カップルは没落。
その二人には手を差し出さず、二人以外は下働きとして雇った。
一家離散しかけていたけど、寮にいれておいたのでいつでも会えるし。
過度な金は与えていないので、水準もそこまでぶち上がってるわけでもない。
ここでの下働きは完璧なホワイトなので、驚いていたが今は凄く満足度を高くしている。
あの、破滅カップルの女は妊娠していたので、赤ん坊はしっかりとした施設にいれた。
出産したら、病院から逃げておいていったもので。
はぁ、なんて無責任な。
男の方には育児の金をむしり取っていたが、元婚約者の家族が将来引き取りたいと望んでいる。
ならば、いづれ預けることにしよう。
「ねえ、これはできてる?」
「はい」
執事が商品をずらりと並べる。
中身をじっくり見て品質を確認して、扇子を広げる。
「もう少しここを直すように伝えて」
商品を引き上げさせると、紅茶を飲む。
この紅茶もブレンドティーとして販売しているもの。
婚約破棄、カタルシスものを読みたいがために自分で主催した小説コンテストの登録された原稿を眺める。
「ここ最近は私のやった出来ごとばかりねぇ」
「禁止しますか?」
「いいえ」
禁止になんかしたら、良作や神作が生まれなくなる。
望んでない。
「ふぅん。このカタルシスものは良いわね」
紅茶をまた飲む。
審査員が他にも欲しいなぁ、と内心流石にマンネリになりだした内容。
「やっぱりお手本でもないと、他のカタルシスが生まれないわ」