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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界に転生したら犬だった件

作者: 774

「わん」


僕が目を覚ましたらなぜか異世界の犬に生まれ変わっていた。なんでこんなことに……

いや、そんなことよりどうすればいいんだ? まずは現状を把握しないと。

周りを見渡すと、そこは森だった。

鬱蒼とした森の中に僕は横たわっていたのだ。

立ち上がって辺りを散策してみる。

どうやらここは大きな森林公園のような場所らしい。

遠くの方には湖も見えるし、人の気配はないけど街もあるようだ。

ふむ、どうやら文明レベルはそれほど高くないみたいだな。



中世ヨーロッパ風の街並みが広がっている。

でもまあとりあえず生きていけそうだからよかったよ。

さてこれからどうしようかな。

人間としての記憶はあるんだけど、自分がどういう人物なのかまったく思い出せないんだよな。

名前すら覚えていないし……

うーん困ったぞ




「きゃあああっ!」

突然女の子の悲鳴が聞こえてきた。

なんだ!? 助けを呼ぶ声だ! 行かなくては! そう思った瞬間、僕の身体はすでに走り出していた。

速い! 信じられないくらい足が速いぞ!



異世界の犬はこんなに足が早いのか!?


僕はあっという間に現場に到着した。

そこには1匹の魔物に襲われている少女がいた。

魔物は体長3メートルを超える巨大な熊みたいなモンスターだ。

襲われているのは頭にうさぎのような耳が生えているかわいい女の子だ。



こ、これは異世界定番の人助けをしたらご褒美がもらえるパターンだわん!

おっと・・・思考まで犬になってしまった。

とにかくなんとかして助けないと・・・。


しかしどうやって戦えばいいんだ? 武器もないぞ。素手で勝てる相手だろうか。

だが悩んでいる時間はなかった。

熊型のモンスターは今にも少女に飛びかかりそうな勢いなのだ。

よしっ! やるしかない! 覚悟を決めた僕は一気に距離を詰めると全力で土下座・・・もとい伏せをした!

古今東西謝罪が全てだ!


「すいませんしたぁああああああ!!!!!」

ズザァアアアッ!! 僕は地面を滑りながら額を地面に擦り付けた。

これがジャパニーズDOGEZAである! 誠心誠意謝る気持ちさえあれば大抵のことは許してくれるはずだ!



「え・・・」


うさみみ少女は戸惑いの声をあげてるようだが知ったことじゃない。

目の前の脅威(熊モンスター)をなんとかするのが最優先だ。

予想通り熊モンスターは戸惑っているようだ。

よし、ここはさらにたたみかけるとき!



僕は必死の形相で訴えた。

「お願いします見逃してください! もう二度と悪さなんてしないんで! このとおりです!」

ドゲザーッ! 再び頭を下げる僕を見て、熊さんは少しだけ警戒心を解いたような気がする。

これはいけるか。


「ぐあああああああっ!!」

さらに大きな咆哮をあげる熊さん。


「わ、わんわん(そ、そうですよね~~~!)」


こうなったら腹をくくるしかない。

異世界転生定番の魔法の力が僕に宿っていると信じるしかない。

大丈夫だ、きっとできるはず! イメージしろ! 魔力を集中させるんだ! 僕は両手を前に突き出すと目を閉じた。

全身に流れる血潮を感じろ。その流れの中心にあるエネルギーの塊に意識を向けるんだ。

すると何か温かいものが手の中に集まってきた。


そして僕は昔ある漫画で聞いた魔法の呪文を唱えた。

「わんころファイヤー!」

ボォオオオオッ!!!! 次の瞬間、僕の掌から真っ赤な炎が吹き出した。

やったぜ! 成功だ! これぞ魔法だ! 僕は歓喜に打ち震えた。

「グガアアッ!?」


まさか犬が魔法を使うと思っていなかったのか熊さんは思いのほか驚き森の奥へと全力で逃げていった。

あいつとはまた戦う気がするわん・・・。



それよりうさみみ少女は大丈夫かな。

「あの、ありがとうございます。あなたのおかげで助かりました」

彼女はそう言うとうさみみの生えた頭をぺこりと下げた。

かわいい。

年齢は10歳前後くらいだろうか。

銀色の長い髪に青い瞳の少女だった。

とても整った顔立ちをしている。

10歳にしてはけしからん胸だわん。

それにしてもなんだろうこの既視感は。どこかであったことがあるのかな。

「あ、私は兎人族のラビって言います。本当に危ないところをどうもありがとうございました」

「わんわん(あ、うん。それはいいんだけど・・・君1人でここにいるの?)」ラビと名乗った女の子はこくんと首を縦に振った。

「はい。私のお父さんはこの森に住んでいるんですけどお母さんが病気なのでお薬の材料を取りにここまで来たんです」

「わんわん(そうなんだ。でも1人は危険だよ。もしよければ街まで送っていくよ)」

「本当ですか!? うれしいです! 実は私方向音痴で迷子になっちゃったんですよ。あはは」

はにかむように笑う彼女の笑顔はとても愛らしかった。

「わん!」

こうして僕はラビちゃんと一緒に街へ帰ることにした。


こうして異世界に転生した僕は、ラビちゃんの立派な番犬になるのだが、それはまた別のお話。

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― 新着の感想 ―
[一言] 兎陣族は犬と会話出来るんだな! ラビちゃんもいきなりの土下座には驚いた事であろう…(笑)
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