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最終話
「ふふふふふ 懐いてきたね 双葉ちゃん」
なんて羊が俳句調で、にやにやしながら言うので私は思わず手を引っ込めた。
「さーて、聞いたところによると次のマスがあがりみたいだよ」
「そっか……、いよいよなんだ」
「じゃあ、一緒にサイコロ振ろうよ」
羊が自分のサイコロを頭でヘディングしている。
「そうだね。最後くらいは付き合ってあげてもいいかも」
私は羊の代わりに私のサイコロを撫でた。ところで。
「サイコロの目がゴールを越したと、その数の分だけ戻るとか、そういうルールあったりする……?」
「それは聞いてないなぁ」
「聞いたって、誰に?」
「狐のお面をつけた羊にさ」
「狐の面……」
狐のお面をつけた人、緑の羊の前には羊の姿で現れたのかな。
「彼、12月に囚われ続けているから、永久にあがれないんだって。本当かなぁ?」
私は、ふと後ろを振り返った。長い道が伸びているだけだった。
「さあ、振るよー、せーの!」
出た目は「1」
過ぎることなく、あがりだった。私の一年は、次の一歩から始まる。
お題:12月の狐 必須要素:七五調