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第一話
出られない。見えない壁に体当たりしてみたり、大声で叫んでみたけど無駄だった。
私は諦めて、ただ唯一この場所にあるサイコロを見やった。
これを転がすしかないってことか……。
ちょっと大きめの、手のひらサイズのサイコロを手に取り、思い切って振ったら3が出た。
途端にゲートが開き、3つめのマスが輝き始めた。私はずんずんと進んで、足元の光るマスを睨みつける。
マスに書いてあったのは「興奮した怒り」だった。
それは、私の今の状況を的確に示していた。だって、双六に一人っきりで閉じ込められるなんて、そんなの有り? 初夢にしたって嫌すぎる。
私はマスをげしげし踏みつけた。「痛い」とでも言ってくれれば気が済むものを。
「出して! 夢なら覚めて!」
鼻息荒く踏みつけていると、ふっと光が消えた。同時にすっと怒りが治まっていくのを感じた。
どうせお正月、時間はたくさんあるんだし、この双六につきあうのも悪くないかな?
お題:興奮した怒り 必須要素:正月