俺、スライムになっちまった・・・第7章
第7章 ー 救出 (1) ー
「バイオが運転なら、僕は助手席の方が良いんじゃないですか?」
「他の車から、無人の車に見られても困るだろ?」
「僕はペーパードライバーですから、運転していただくのはありがたいんですけどね。」
「運転歴なら30年以上だから、安心しろ。」
でも、免許はないけどな。そんなのはどうでもいい、持てる力を使って救出方法を考えなければ・・・
「運転が上手いのか、スムースですね。」
「信号は調整できる物はこちらから操作してるからな・・・内緒だぞ。」
「え?信号ってそんなこと出来るんですか?」
「ああ、一部の信号機はラッシュ時の調整や、バス路線、緊急車両向けに調整できるものがあるんだ。」
「すごいですね・・・」
車は高速道路に入り、名古屋に向かう。
「今の時間なら3時間後ぐらいには名古屋だな。」
「ここからは竜二が運転できるか?」
「大丈夫です。が・・・何するんです。」
「さっき確認した建物の周りを調べてみる。作戦を立てるんだ。」
先ほど確認した防犯カメラのビデオを解析してみる、出かける時に一緒に乗り込んだ女性がいるな・・・
随分親しげにしているので、車のナビ画面に写真を映す。
「竜二、このモニターに写ってる人は知ってる人?」
「ああ、確か近くに住んでる・・・モカさん、じゃないかな?」
「彼女の素性とかわかるかい?」
「いやいや、知ってるわけないでしょ。」
調べてみるか・・・住民台帳から同姓同名の検索も行うが・・・転入届がだしてない?
いや、時間がかかるが、防犯カメラの解析をするか・・・
彼女の行動から疑うところが見つからない・・・でも、頻繁に出かけるのに、どこに向かっているのか周辺だけではダメだな・・・!そういえば、今の建物の防犯カメラはどう?・・・見つけた・・・モカだ。
「どうやら彼女が絡んでいるようだな。」
「そういえば、今日だったかな?輸入品の特売会がどうのとか言ってた気がする。それに行く感じで連れ出されたかも。」
「親しそうに話していたし、マキ自らタクシーに乗り込んでいたしな。」
「マキは大丈夫でしょうか?」
「ああ、今のところは何もないと思うぞ。」
・・・
「竜二、運転を変わろう。そして、救出作戦だ、まずは・・・・」
・・・
「大丈夫ですか?」
「ああ、この一年で自分が何ができるかわかってきたしな。」
「じゃあ、バイオを信じて実行しますか。」
「そろそろ、最初の電話から三時間、次の連絡が入ってもおかしくない時間だ。」
車を恵那サービスエリアに入れ、連絡を待つ。
『先生、バイオさん、電話が来ました。転送します。』
「もしもし、塚本です。」
『先生、もうすぐ名古屋ですか?』
「まだ高速道路に乗ったところだ。 それより、マキは無事なんだろうな。」
『安心してくださいよ、人間には興味ないんで、未曾有の生物との交換ですから、それまでは丁重に扱いますよ。」
「彼女と話がしたい。携帯に出してくれ。」
『仕方ないですね、少しだけですよ。』
『竜二』
「マキ?大丈夫か?」
『何が起きてるの?私は・・・』
「マキ?マキ!」
『後は、取引が終わってからにしてくれませんか?』
「マキに何かあったら許さないからな。」
『大丈夫ですよ、丁重におもてなしさせていただきますんで、でも、急がないと知りませんよ。』
「わかった、名古屋まで三時間ぐらいだ。」
『それでは金城ふ頭にいますから、近くまで来たら電話してくださいよ、先生・・・プチっ』
「とりあえず、マキは無事のようでよかったです。」
「じゃあ、作戦通りに行こう。」
「あやちゃん、繋がってるかな?」
『はい、バイオさん、先生、聞こえてますよ。」
「じゃあ、名古屋に向かってくれ。」
『わかりました。予定どおり、新東名で名古屋に向かいます。』
一応、逆探知されても困るからスタッフのあやたちに竜二の携帯を持たせたまま名古屋に走らせる。
「さて、俺たちも向かうか。竜二、運転を頼む。」
「了解、マキ、待ってろよ!」
名古屋に向け、再び動き出した。