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バイオ  作者: 白髭亥
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俺、スライムになっちまった・・・第3章

第3章 ー 集中治療 ー


 「猪飼さん、こちらでお願いします。」

 手術用の服に着替えた被験者を術台の上に横たわってもらう。

 「よろしくお願いします。」

 不安そうな顔つきは隠しきれていない・・・

 「時間が掛かるとおもいますが、精一杯やらせていただきます。」


 少しの準備をした後、

 「それでは全身麻酔を行いますね。 気持ちを楽にして、後は、私たちに任せてください。」

 麻酔の薬を注入して・・・被験者の睡眠状態を確認する。


 「それでは被験者に試験薬VAIO1976の注入を行います。膵臓に予定量の75CCです。」

 「75CC確認しました。」

 「それでは注入を開始します。」



 「針の位置、予定位置に到達です。」

 「注入開始します。」


 「全量、注入完了です。」

 

 なんてことはない、試験薬を膵臓がリセットする液量だけ入れるだけなのだ、ただ、ここからどのぐらいの時間が掛かるかわからない。


 一時間ほど様子を見ている・・・早ければそろそろ細胞の活性が見えてくる頃。

 変化は見られない。

 2時間、3時間、4時間・・・8時間。何も変化の兆しが感じられない、被験者はそろそろ睡眠が溶ける頃なのに・・・失敗か?

 

 「う・・・ん・・・」

 被験者が意識を取り戻しそうだ・・・でも変化はない・・・


 被験者が目を覚ます。

 「先生?どうなりました?」

 「今の所、大きな変化は見られません。しばらく、このまま様子を見ます。何か気になることはありますか?」

 「お腹が空きました。」


 確かに被験者は朝から何も食べてない。

 「じゃあ、食事は用意しますね。」

 

 しかしこの状況で食欲があるのはすごいな・・・


 「塚本先生、被験者の脳波に変化があります。」

 「何?何が起こってる?」


 全員が試験機を覗き込む。

 「データーの記録と解析を始めてくれ、猪飼さん、体調はどうですか?」

 「別段、これと言って変化は感じられません。」

 「先生、心拍数が異常に上がっていますが、脈拍は変化が見られません、後、触手による感覚でも、至る所で部位の差が生じています。」

 「どうですか?猪飼さん」

 「すごく・・・眠気が・・・あ・・・」


 「猪飼さん、猪飼さん、わかりますか?・・・意識がありません。」

 「先生心拍が止まります。エコーに臓器が確認出来なくなりました。」

 「脳波のパラメーターも異常値に達しています。」

 「脈拍停止、AEDの処置を始めます。」

 「強心剤を注射してください。」

 「AED、ショックします。 3・2・1・・・・」

 「心拍、戻りません。」

 「もう一度だ・・・」

 「先生、患者の体が水風船みたいになってきてます。」

 「何?」

 触診すると異様に柔らかい、皮膚の色素にも変化が見られる。

 「何が起きているんだ?」


 「MRIの準備を頼む。」

 「先生、患者の体が柔らかくて持ち上げれません。」

 「シーツごと移してしまおう、そっちの端を持ってくれ。」

 「セーノ!」

 まるでスライムだな。触った感じは人間の皮膚の感触はあるが・・・

 「まるで耳ダブが大きくなったみたい」

 確かに、・・・しかし、頭と手足の区別がつかなくなってきた?

 検査台に乗せた頃にはアメーバ? スライムだな・・・

 一部分を取ろうと物体に触れる。すると提供してくれるかのようにピンポン玉くらいのが手のひらに飛び込んで来た。

 「シャーレをとってくれ・・・、これを分析室に持って行ってくれ。」

 言っていることが理解できているようだ。

 検査室から戻ろうと思うのだが、この泥状のものをどう運ぼう?

 そうだ!

 「乳幼児室からベビーバスをもらってきてくれ。」


 時折、全体を震わせたり、不規則な動きや変色するところを見ると生命体としては間違いないだろう。

 しかし、脳も何もない状況から意思のある生き物でいられているのだろうか?

 

 それよりもマキにどう話したらいいんだろう・・・



 

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