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転生したら日常系学園ハーレム漫画の主人公みたいなキャラになっていた

たぶん同じようなストーリーが山ほどあると思う。

「ねぇ内田、この後ちょっとファミレス寄らない?」


そう聞いてきたのは同じクラスで、同じ文芸部に所属する、山下(やました)怜奈(れな)だ。

少し前に部長と他の部員たちが図書室に用事があると出て行き、部室には内田こと俺と、山下しかいない。


部長にはもう帰っていいと言われている・・・が。


俺は「あー」と少し考える素振りをしながら彼女に顔を向けた。

「ごめん、家の用事あるんだわ」

そう答えて彼女とのフラグを回避する準備をはじめた。


「いや、あんたホームルーム終わった後に『帰ってもやることねー』って言ってたじゃん」


・・・ちっ。聞かれてたか。


「いや、あの後に母親から急に連絡が来たんだよ」

「スマホの電源切れたってずっとそこで充電してるじゃん」

しまった。自分から墓穴を掘りまくってしまった。

山下は少し寂しそうな表情を浮かべて、上目遣いで俺を見てきた。

「ねぇ・・・内田、私とファミレス行くの、嫌なの?」

「・・・嫌じゃないけどさ。お金が無いんだよ。でも正直に言うのが恥ずかしくてさ」

などと当たり障りのない回答をした直後、彼女は鋭い視線を俺に向けてきた。

「・・・さっき部長に千円札で札束ビンタごっこしてなかった?」

あ、それも見られてたのね。

「・・・はい、してました。スイマセン」

俺は素直に謝った。

「やっぱ私と行くの嫌ってことじゃん!もういいよ!!」


そう言うと彼女は勢いよく鞄を手にして部室から出て行った。

扉の閉める音も勢いがよく、非常にお怒りのお気持ちが伝わってきた。


・・・まぁ、結果オーライ?

非常にお怒りなところが怖すぎて、明日ちょっと顔を合わせづらい。


・・・


そんなこんなで俺は無事に今日のフラグ回避に成功した。


「ふぅ・・・」

ため息をつき、椅子にもたれ掛かった。


外で少し強めの風が吹いて、窓がガタガタと音を立てる。

今は、5月のGW明け、窓からまぶしい夕日が差し込んでくる。

山下が怒って部室を出て行かなかったら眠ってしまうような温かさだ。


山下が出て行き、俺は一人部室に取り残された。


「・・・部長が戻ってきたら帰るか」


そう独り言をつぶやきながら帰る準備をし始めた直後、部長たちが帰ってきた。

「お、内田まだいたのか」

「あ、お疲れ様です」

「おう。俺たちは図書室から借りてきた本の整理してから帰るからお前は帰っていいぞ」

特に帰ってもやることが無いので俺は部長の手伝いでもしようと思った。

「いや、手伝いますよ」

ついでにさっき山下怒らせたからばったり遭遇するのが怖いという気持ちもある。

「いやいや、今日はもういいよ。帰っていいから」


・・・?

なんか妙に優しいな。嫌な予感が胸をざわつかせる。


俺は仰々しい態度で部長を答えた。

「いえいえー手伝いますよーーー。なんか凄く手伝いたい気分なんで!」

「いやいや、帰っていいから!無理するなよ!部長と後輩たちに任せてお前は先に帰っていいから!」

部長もやたら仰々しい。怪しすぎる!

「手伝いますよー!部長と後輩置いて帰れるわけないじゃないですかーーーー」


「内田先輩!私たちで十分ですから!いつも鍵閉めしてくれてるし今日は帰ってください!」


下らない押し問答をしていたら後輩が割って入ってきた。しかもかなりの勢いだ。

「ほら、お前はもう帰れ。たまにはのんびりしろ。」

俺は根負けして部長たちの指示に従った。

「・・・わかりました。お疲れ様です」

「おう、また明日よろしくな」


・・・なんでそうまでして俺を帰らせようとするんだ?

釈然としない気持ちで俺は靴を履き替え校門へ向かっていた。




校門のそばには一人の女子生徒の影があった。

誰かの帰りを待っているのだろうか。


あーいいね、青春してるねぇ。

そう思いながら俺は彼女の横を通り過ぎようとしたとき、その女子生徒に声を掛けられた。


「あ・・・内田」

「ん?」


・・・山下だった。なんでやねん。部室出て行ってから20分ぐらいは経ってるぞ。


山下は顔をこちらに向けているが、視線は横にずらしてぎこちない笑顔を浮かべながら話し始めた。


「部室出てしばらくしたらさ、部長たちに会ったんだ。で、一人で帰ろうとしたら『せっかくだから内田と一緒に帰れば?たまには2年生だけでのんびりファミレスにでも行って来いよ。すぐに向かわせるから』って言われて待ってたんだ・・・」

「そ、そうだったんだ。なんか待たせて悪かった」

「いや、私こそ・・・なんか・・・その、怒ったりしてごめんね・・・」

「それはその、俺が悪いから。俺の方こそごめん」


申し訳ないという気持ちは本心だ。

しかし謝りながらも俺は思った。


・・・マジか部長。

俺がせっかく回避したフラグをまさか部長が回収していたとは。


しかし俺はフラグ回避をあきらめない。

「でも本当にごめん!俺、マジで今日はちょっと・・・」

そう言って彼女の横を通り過ぎようとしたとき、彼女が俺の腕を力強く握りしめてきた。

「ごめん、今日はちょっとだけ付き合って」


ストレートに言われてしまった。もうこれは断ることができない。

「あ、あぁ・・・分かった。1時間だけだぞ」

「1時間で十分、一緒に話をしてくれるだけでいい」

こうして必死のフラグ回避もむなしく、俺たちはファミレスへ向かうことになった。




本日のフラグ回避:失敗


なんかそういえばBLが蔓延する世界で、主人公がBLにならないように奮闘する漫画が流行ってましたね。あれめっちゃ好きでした。

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