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喜び無き勝利

「何故だっ、マニ⁉」

 私が剣を交えている相手は、実の妹だった……。

 武芸でも学問でも、全てにおいて、私より上だった……。もし彼女が男に生まれていたなら、今頃は、喜んで家督を譲り、私は幼い頃からの夢だった遍歴の騎士となり、気儘な一人旅でもやっていただろう。

「何を言おうと、兄上には、お判りいただけますまい……」

 兜から覗く目には……いつもと同じ、強い意志の光が有った。

 まさか……そ……そんな……馬鹿な……。

 マニは……王女を誘拐した元・王宮付きの女魔導師に……操られている訳ではないのか? 自分の意志で……あの魔女に服従していると言うのか?

 妹の呼吸が、わずかに乱れた隙に、この旅の同志達の様子を見る……。

 誘拐された王女の許婚(いいなづけ)である同盟国の王子と、その従者の騎士は、我が妹の攻撃により負傷していた。

 王子は上腕の内側……従者の騎士は太股……。つまりは、太い動脈の位置……一刻も早く手当しないと失血死の危険性が有る傷だ。

 司祭は治癒魔法で2人の傷を癒している。

 魔導師は何かの魔法を使おうとしているが……。

「おやめ下さい‼ これは、武門の家に生まれた者同士の……」

 私が魔導師に向って、そう叫んだ、次の瞬間、マニの胸に……。

「一対一の正々堂々たる戦いと言われたいのですか?」

 何の感情も感じられぬ不気味な声。

 名前は知らない……。……「影」と云う呼び名を除いては……。

 ヤツは……マニを……私の妹を……背後から弩弓(クロスボウ)で狙撃していた。

「貴方様の妹であろうと……所詮は反逆者。殺す事が出来さえすれば良いのです」

 ヤツの左手が、力尽きようとしているマニの頭を背後から掴み……そして……ヤツが右手に持っている短剣が、鎧のわずかな隙間から、ゆっくりと私の妹の喉笛に突き立てられていく。

「貴様……」

「これで……大の男3人が……女1人に遅れを取った事は誰にも知られずに済みますな……。おや? 何か御不満でも……?」

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