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12. 天空城

 

 凄い……


 大賢者エルグレオの記憶のお陰で分かってはいたが、大賢者エルグレオのアジトは凄い事になっていた。


 玄関? 裏口と言った方がいいか……。

 裏口から入ると小さめなエントランスがある。


 エルの記憶によると、沖縄のシーサー型のゴーレムが、神社の狛犬のように玄関の両脇に鎮座しており、外から来る外敵からアジトを護っているみたいだ。


 一応、俺は、左目に移植された魔眼により、このアジトの主としてシーサーゴーレムに認められてるらしい。


 小さめのエントランスを抜けると長い廊下があり、突き当りには、このアジトの本当のエントランスがある。


 本当のエントランスは吹き抜けになっており、太陽光がさんさんと降り注いでいるのだ。


 地下のアジトに、太陽光はおかしいだって?


 そう、ここは地下では無いのだ!


 実際は、天空。


 雲の上にある天空城なのである!


 どうやらここは、大賢者エルグレオが、天空の城ラ〇ュタ?とかいう異世界のアニメに影響を受けて造った、空に浮く3階建ての石造りのお城なのであった。


 勿論、空中庭園も有り、城を管理するゴーレム達が新鮮な野菜を作っていたりする。


 動力は、大賢者エルグレオが倒した蒼龍の魔核。


 その魔核が、常時、膨大な魔力を垂れ流しており、それを利用して『帰らずの森』に魔力を流し込んでいるらしい。


 因みに、天空城の裏口と『帰らずの森』のダンジョンは、エルザとエルザの娘を見守る為に、大賢者エルグレオが魔法で繋げたのだとか。


 天空城の伝説は聞いた事をはあったが、まさか実在するとは思いもしなかった。


 しかも、その主に、自分がなるとは夢にも思わない。


 金持ちになるという俺の目標は、イキナリ叶ってしまったという訳だ……。


 天空城の価値は、お金では買えない。

 プライスレスという奴だ。


 しかしながら、人間の欲というものは際限の無いもので、今の俺の目標は、自らも、大賢者エルグレオのような大賢者になる事が、目標になっている。


 魔法が使いたい。

 俺の目標は、ただ一点に定まっている。


 トゥルーズ家は、暗殺の家柄であるので、それ程、魔法は得意でない。

 基本は、体術とスキルだよりの戦術になる。

 俺は、派手に魔法をぶっぱなしてみたいのだ!


 それから俺は、少しだけ目立ちたい。


 トゥルーズ家は、暗殺家業を生業としていた為、裏の世界ではそれなりに有名らしいが、表の世界では全くの無名である。


 トゥルーズ家の技も、目立たず殺す為の暗殺技ばかりなので、全ての技が地味なのだ。


 折角、大賢者エルグレオの記憶により、魔法を覚えたのだ!

 ぶっぱなしたいと思うのは普通の事なのだ!


 という訳で、俺は暫く、天空城に籠る事にした。


 ここには、魔法に関する大量の書籍や資料、余裕で自給自足できる食料、俺の世話をしてくれるメイドゴーレムに、天蓋付きのベッドまである。


 折角、俺の物になったので、存分に味わいたいというのが本音なのかもしれない。


 神々が住まう雲海の上に浮かぶ、天空城の王。


 ウン、いい響きだ!


 俺は天空城の王様気分を味わいつつ、暫くの間、魔法の特訓をする事にしたのだった。



 ーーー



 ドッカーン!


 俺は、いつもの日課として、海に向かって上級魔法をぶっぱなす。


「ウッ……気持ち悪い……」


 いつもの魔力切れの倦怠感が襲って来た。


 リアムは、天空城に暮らし始めてから2年間、毎日、魔力をスッカラカンにする修行をしているのだ。


 魔力総量を増やす方法は、単純明快、ひたすら魔力をスッカラカンにする事である。


 ここは天空城、いつでもどこでも、人の目を気にする事なく魔法をぶっぱなせるのだ。


「はぁー、やはり俺には、魔法の才能が無いのか……」


 リアムは、MP回復ポーションを飲みながら、溜息をつく。


 天空城に来てから2年間、ひたすら魔力総量を増やす特訓をしてきたのだが、リアムは、未だに上級魔法を一発放つだけで、魔力切れを起こしてしまうのだ。


 一応、上級魔法より威力が高い聖級魔法や神級魔法の知識はあるのだが、リアムの魔力総量では放つ事が出来ないのである……。


 まあしかし、今の時代に聖級魔法や神級魔法をぶっぱなす魔法使いは聞いた事ないので、リアムも既に、一流の魔法使いと言えるのだが、なまじ知識がある為に、聖級魔法や神級魔法を使ってみたいのだ。


「はぁ……もう限界だな……」


 そう、リアムは今日で、15歳の成人を迎える。


 エルグレオの知識によると、この世界の住人は、15歳で魔力総量が決まってしまうのだ。


 これは、この世界の真理。


 この世界創成の女神が決めたルールなのである。


 唯一この理を外れるのは、異世界転生者だけ。


 なので、異世界転生者のエルグレオは、魔力総量を増やし続け、聖級魔法や神級魔法が使えるようになったのだ。


 しかしながら抜け道はある。


 聖級魔法や神級魔法に使う魔力を、魔石に貯めて置けばよいのだ。


 まあ、とはいっても、聖級魔法や神級魔法の魔力を貯めておける程の魔石など中々無いのが実情だ。


 天空城の動力に使っている蒼龍の魔核を常時持っておけば、いつでもどこでも神級魔法をぶっぱなす事が出来るが、蒼龍の魔核は滅茶苦茶大きい。


 普段持ち運ぶのは不可能だし、魔法の鞄に入れても、蓋から常時魔力が溢れてしまい収拾不可能になってしまう。


 なので、ペンダントや指輪に出来るぐらいの大きさで、尚且つ、聖級魔法や神級魔法が打てる程の魔力を貯めれる魔石が必要となるのだ。


 一応、天空城には、神級魔法が打てる魔力を貯めれる魔石が何個かある。


 しかしながら魔石は使い捨て、一度使ったら魔石は粉々に砕けてしまうのだ。


 リアムは、そんな貴重な魔石に、蒼龍の魔核から魔力をチャージする。


 魔石は全て指輪に加工されており、リアムは、二つだけ指にはめて、残りは魔法の鞄に仕舞った。


「ヨシ! 行くか! 今日この日こそ、リアム·トゥルーズの伝説の始まりの日だ!」


 リアムは決めていたのだ。

 成人して15歳になり、魔力量が打ち止めになったら、王都にある王立魔法学園に入学すると。


 リアムの目標の一つに、少しだけ有名になるというのがある。


『帰らずの森』の攻略の時も、せこせこ魔物から隠れながら攻略した。


 たまには正々堂々、陽の当たる場所で活躍したいのだ!


 王立魔法学園で優秀な成績を収めれば、自ずと有名になれる。


 平民が王立魔法学園に入学するには、実力が必要らしいが、俺には大賢者の知識が有るから余裕であろう。


 次いでに『帰らずの森』の入口の村に戻るので、エリナと隣のオバチャンのお土産も持って行く。


 天空城の空中庭園では、異世界の甘くて美味しい果実も栽培しているのだ。


 きっと、エリナと隣のオバチャンも喜んでくれるに違いない。


 大賢者エルグレオも、エルザの子孫にあたるエリナと隣のオバチャンに、異世界の果実を与えても文句を言わないだろう。


 だって、エルグレオはエルザとその娘を見守る為だけに、わざわざ天空城の裏口と『帰らずの森』を繋げたのだ。


 そんな訳で、リアムは、2年振りの里帰りする事にしたのだった。





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