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そらの歌声  作者: 湯納
1/3


『ねぇ、私。ウユニ塩湖で、満天の星空の下で、演奏したい!』


夜の訪れと共に静まり返った音楽室。

ギターを弾く手を止めた彼女は、満面の笑みでそう言ったのだった。


軽音楽部の活動はとっくに終わり、聞いていたのは片付けを終えた僕だけであった。


嘘みたいに綺麗な夜空を映すガラスを背景に、

『君と』


嘘みたいに澄んだ目をこちらに向け、

『今すぐにでも』


嘘みたいに言うのだった。

『行きたい!』


まだまだ暑さの止まない、秋口のとある木曜日だった。



彼女を説明するとしたら、僕と同じ軽音部に所属する一つ上の先輩で、僕の彼女でもあって、

冷たいスイーツとギターがとにかく好きで、そして何よりも「わがままを絶対に叶える」人物であるという事だろうか。


だから、この突発的なお願いを僕は、喧嘩に発展してでも止めるか、全力で協力するかの二択を強いられている。

確か、ウユニ塩湖って見渡す限り水面に空が映し出される幻想的な絶景が見られる有名な湖で、場所はヨーロッパ……南米だっけ? 

当然、旅費や行程を考えれば『いいね、じゃあ今週末にでもしよっか』とはならない。あまりにも非現実的だ。

けれど、叶うならば彼女の願いを手助けしたい。何より、そんな彼女を見たいと思う自分がいる。

いつか。数年後であれば。バイトを入れて、親にも借りれば半年くらいでいけるだろうか。


チラリと見れば、聞くまでもなく彼女は『今夜にでも行きたい』と言わんばかりの表情を浮かべている。

机に座り足をぷらぷらさせ、ふんふんと鼻歌まじりに上機嫌そうで、きっと尻尾があれば猫のように揺らしている事だろう。

期待と熱に浮かされた、楽し気な顔だ。


あぁ。またこの顔にやられてしまうんだ。

僕も馬鹿だよなぁ。


『分かった。明日までに何か方法を考えておくよ』


結局、僕は翌日提出だった課題もそっちのけで、夜通し調べ物をする事となった。


(続く)

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