表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺探偵  作者: きのこシチュー
7/20

case2.二つの証言-3

———3人は、いつも仲良しだった。


3人とも、いろんな問題を抱えていた。

つまり、3人は孤独だったのだ。


似た者同士、引き寄せられる少女たち。


いつの間にか、3人は孤独ではなくなっていた———はず、だった。






「どうだ、真城。聞き込みは順調か?」

大庭探偵事務所。

2人で学校で聞き込みを行ってから、3日経った。

つまり涼月紅羽が失踪してから6日経ったわけだ。

「はい!恐らく順調だと思います!」

元気よく少女はそう答える。

と思ったらすぐに眉をへの字にしてメモ帳をめくり始める。

「あ、でも…ひとつ分からない事があるんです」

ピタリとめくるのをやめ、そのページを大庭に見せる。

それを大庭はしばらく、まじまじと無言で見つめていた。

「………は?」

読み終えたらしく、彼は顔を上げた。しかし、彼の頭の上には、あからさまなハテナが浮かんでいた。




◇◆◇


「神楽月さん、ちょっと尋ねてもいいですか?」

「…ええ」

まず初めに話を聞いたのは、同じクラスの神楽月かぐらづきれもんさん。

彼女はこげ茶の髪をストレートにしている、少し怖そうな子でした。

妙な雰囲気があるためか、クラスメイトの皆さんは彼女から一歩引いた距離で彼女と接しているように見えました。

「その…神楽月さんって、1-5の涼月紅羽さんって方、知ってますか?」

その名前を出した瞬間、彼女の目の色が変わったような気がしました。

ですが、気のせいだったのでしょうか。

「………知らないわ」

すぐに彼女は元の雰囲気に戻っていたのです。

「…隣のクラスの祓月珊瑚はらえづきさんごにでも聞きに行ったら?アイツなら多分なんか知ってると思うけど」

そうぶっきらぼうに言うと、彼女はすぐに手元にあるスマートフォンを見てしまいました。




神楽月さんの言う通り、隣の1-3で祓月珊瑚はらえづきさんごさんに話を聞こうとしました。

「…は、はい。えーっと、わ、私が祓月珊瑚です。な、何か御用ですか…?」

それは、くるくるの明るめの赤毛を肩のあたりで切り揃えた少女でした。恐らく天然パーマなのでしょう。

彼女はかなり怯えた様子で出てきました。…何か原因がありそうで、少し気になりましたが、今は関係の無い話ですのでそれはその辺に閉まっておきました。

「あの、祓月さんは1-5の涼月くれ」

神楽月さんとほぼ同じセリフを祓月さんにも聞こうとしたのですが、その名前を口にした途端、彼女はみるみる顔を真っ青にしたのです。

「だ、大丈夫ですか?!具合、わる」

「違うんです、いや違くない、私は、私は何も、いや、違う、知らない、違う、私が、私が」

「えーっと…と、とりあえず落ち着いてください」

混乱しているような彼女の背中をさすろうと手を伸ばしましたが、

「わた、私、が!私が彼女を!こ、こここ、殺したんです!!」

という声に、私の伸びかけた手は止まってしまいました。


◇◆◇




「…と、いう事らしいです。by一昨日の私」

「お、おう…なるほど」

真城は朝読んだ日記の内容を暗記したらしく、たった今そっくりそのまま大庭に教えたようだ。まあ所々脚色(特にセリフ辺り)も加えているだろうが…しかしその再現力はすさまじい。

「いやでもそれが一昨日なんだよな?昨日もなんかあったのか?」

「そう!そうなんですよ!私も日記読んだ時びっくりしちゃいました!」

少し興奮気味に、真城はまた暗記したらしい日記の内容を話し始めた。




◇◆◇


「違う、自殺よ」

「なッ…!何言ってるの、他殺よ!私が殺したの!!」

昨日祓月さんが騒いでいた事を知ったらしい神楽月さんが、祓月さんへ文句を言っている場面に、私は遭遇しました。

「え、えっと…どうしたんですか?お二人とも」

「あっ…」「ふぁっ?!」

いきなり話しかけられてびっくりしたらしく、2人は額に汗を浮かべていました。

「…神楽月さん、涼月さんの事知ってるんですね」

「……ええ、そう。昨日はごめんなさい、嘘をついて」

「…何故嘘をついたか教えてくれますか?それと、さっきの言い争いの意味も」

そう聞くと、2人はこくりと頷き、近くの教室に入って私の聞き込みに応じてくださいました。


神楽月さんが嘘をついた理由は、涼月さんと祓月さんとはもう関わりたくなかったからだそうです。

ですが私に祓月さんの名前を教えた事で、神楽月さんは結局彼女と関わってしまう結果になってしまいました。


「…えと、それで、何故お二人の主張が食い違ってるんですか?」

「違う、コイツはただ責任負いすぎなだけ」

「ねえ待ってよ!じゃあどうしてれもんは責任感じないわけ?!おかしいよ!そんな冷静でいられるなんて!!」

ぎゃんぎゃんと祓月さんが騒ぎたてる。こういうのをヒステリーって言うんですかね?

「あーもううるさいな!!私はアンタとはもう関わりたくないっての!この死に損ない!!」

「なッ…!!れもんアンタ!!」

涙目でそう言いますが、祓月さんはそれ以上何も言えませんでした。

「…わかった?私はこういう人間なの。話はここまでよ、夜宵さん。手間かけて悪いわね」

「えっ…?は、はい」

「じゃあね珊瑚。もう二度と顔見せないで」

そう言って、神楽月さんは教室を出ていきました。

「ふんだ、れもんなんてしーらない…ごめんね、真城さん。私も帰るわ」

そう言って出て行く祓月さん。ぽつんと教室に取り残される私。

なんだか夫婦喧嘩に巻き込まれた感じでした。


◇◆◇





「…と、いう事らしいです。by昨日の私」

「なあその“by○○の私”いるか?」

先程から気になっていた事を突っ込む大庭。

冷静にツッコミを入れる大庭は少し新鮮かもしれない、とその様子を見ていた神在は思った。

「なるほどな。ありがとう真城、おかげで真実が見えてきたわ」

「え?!ほ、ホントですか?!」

「ああ。そんでさ、ちょっと頼まれてもらいたいんだが」

「なんですか?」

——そんな会話ののち、涼月日向が探偵事務所にやってきた。


彼女の慌てようを見て、大庭は一言、

「…案外早かったな」

と呟いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ