プロローグ
皆さんこんにちはこんばんは果てはおはようございます。これから小説を投稿して頂く神虹です。
よろしくお願い出来ればと思います。これから始める物語はかなり空回りするかと思います。少しでもお付き合い出来る方は暇つぶし程度に読んで頂けると幸いです。
―19世紀アメリカ。砂塵が舞い狂う荒野にフードを目深に被り右手で一回り大きな袋を持ち、ボストンの様に肩に乗せた男が西部劇を彷彿とさせる街を練り回っていた。荒廃した街並みはさらに男の冒険心をくすぐりそして誘うようだった。
街を練り回る最中男はある音に耳を傾けた。微かであるも力強い音で奏でるドラム。
ドラムに合わせるかの如くドラムに足りない音を補うアコースティックギター。
この2つの音楽とは別で奏でているようであるも耳を澄ませば同じリズムで音を奏でるトランペット。
男は理解した。
これは荒廃した街にポツンと咲く言わば一輪の美しい華であり、この街での唯一の娯楽......ジャズである。
その音色が響くオアシスはいかにもな雰囲気を醸し出しているバーであった。
古びた街に1つの灯火それは行き交う人々のフィーリングスポットの様なものだ。
男は右手に袋を持ちながら左手で音色が聞こえるオアシスへの扉を開けた。......その刹那男は圧巻した。
古びて荒廃した街の一環に意外にも意外な光景を目にしたのだから。
そこには荒廃していた街も関わらずジャズへの熱いアンコールが行われていた。男はジャズの音色を聴き永らえる群衆を避けつつ本来の店のバーへと行き着いた。
「スコッチ1つ」
男は口を開け低くマスターへと呟きながらコインをカウンターへと投げ出した。
マスターはそれを了解し左手の人差し指と中指でコインを回収し、意気揚々と酒を小さなグラスへ注ぎ込み始めた。
「......この店を訪れたのは初めてですか?」
タキシードを着た三十路の男は注ぎ終えるとカウンターで座る男に渡すと同時に渋い声で話始めた。
「ああ。だが少し驚いたなまだこんな場所が残っていたのか」
「確かに何度もギャング共がこの街に襲撃を仕掛けてきました。しかしこんな街並みですから誰にも相手にされずいつギャングに襲われるかも分からない恐怖からみんなこの街を後にしました」
「成る程人はいないとは思っていたが不意な虚無感に襲われたのはそういうことか」
「はいこの街をご覧なられた行き行く人々がそのようなことを仰っていますよ」
「そうか......それは悪いことを言った」
「いえいえいつものことです気にしないで下さい」
「すまなかったな」
何気ない会話が男にとっては久しぶりの会話であるがために弾みに弾んでいる。
男はカウンター席に座りながら他愛のない会話を楽しんだ。初めて会ったのにも関わらずまるで10年来の友のようだった。
「......そうだお客さんあそこのジャズバンドに曲をリクエストしてみてはいかがでしょう?」
「リクエスト?」
「はい。あのジャズバンドそれこそこのような空虚な場所におられますがレベルはかなり高いですよ。世に知られている曲は勿論即興なんてお手の物ですよ」
マスターはまるで自分の子供の様にジャズバンド達を褒め称えた。それこそ長く一緒にいるのが良く分かった。
「そうか......なら1つお願いしようか」
男の声が聞こえたのかジャズバンドは男の方に視線を寄せる。
「リクエストは......これを奏でて貰いたい」
男は手に持っていた袋から楽譜が書いてあるわら半紙を取り出しジャズバンドに見せた。
コクコクと頭を振り了解の合図を出した。
男が出した楽譜の名は鎮魂歌《Requiem》であった。
男はその楽譜の最終節を見つけるために旅をしていたらしく空白となった節を見つけ出すため時には自分自身で奏でるも3節目の途中に不協和音が入り美しい音色を全て駄目にしてしまう。
男はそれを忌み嫌い、不協和音を聞くことを避けていたが酒が入った男はそんなこと忘れている。男は常に忌み嫌っていた楽譜をジャズバンド達にリクエストした。
「鎮魂歌《Requiem》」
ジャズバンドの1人が曲名を言い放ち曲が始まった。
豪快かつ爽快な音色。その音色は聞くもの全てを魅了し虜にしてしまうほどの美しさであった。
「......そろそろか」
問題の不協和音の部分だ。
ジャズバンドは不協和音と知っているのだろうか否認知していないだけなのだろうか迷うことなく弾き、叩きそして吹いている。
「......」
次の節に不協和音が流れるその覚悟で男は音色に耳を傾けていた。全員がジャズバンドに夢中になっているその刹那......不協和音は鳴り響いた。
しかし周りの観客やジャズバンドは今までの勢いに駆られ不協和音などは気にしなかったただ2人を除いて。
「......今変な音鳴りませんでした?」
「あぁそれがこの楽譜の問題点不協和音だ」
「不協......和音......?」
「あぁ2つ以上の音が出されたとき全体が調和せず不安定になる和音のことを指す」
「へぇだからあんなにも変な音が出たんですね」
「............」
「ん?......お客さん?」
「............」
「お、お客さん......?」
「............」
返事が帰ってこなかった。男はいつのまにか衰弱死していた。
誰にも気付かれることなく机に突っ伏したまま息を引き取った。
「死んでいる......」
その言葉を聞いてジャズバンドや他の観客でさえ机に突っ伏していた男をじっと見つめていた。
シルクハットを被ったトランペットを吹く白髪の50過ぎの老人が恐怖に駆られたのか手が震えだし男から借りた楽譜を落とした。
観客はそれを今一度確認し憶測であった恐怖は断定へと形を変えた。
そして観客達はあの不協和音を聞き次は自分だという妄想に駆られ店から次々と出て行った。
残ったのは店のマスターとジャズバンドだけでそこには虚無感だけが漂っていた。
凄く少ないですがここまで読んで下さりありがとうございます。出来れば感想なども込めて頂けるとありがたいです。アンチやアドバイス等もこれからの糧となりますのでアンチの方は具体的にどこが悪かったかを添えて頂けると幸いです。この物語ですが反響を呼ぶとは思っていませんが少しでもいいねが付けば続きを作りますのでよろしくお願い致します。