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病んでるなぁ。この受付嬢。
「それじゃ、先に行ってくるね。ユランは今日どうするの?」
「後で冒険者ギルドに顔を出すよ。依頼をある程度こなさないと修行した意味がないからね。あと・・・・・ミリアナの恋人として恥ずかしくないようにしたいし」
「もう。私はそんなの気にしないのに」
どれだけ強くなっても、やっぱりユランはユランだった。いつも通りネガティブだけど、それで安心した。一応、昨日本人かどうか確かめるために抱きついたけど、記憶はユランのだったし、遺伝子レベルで見て変装した可能性もなかったわけだけど。
「さて、今日も頑張りますか」
勇者様の相手だけは嫌だけど。
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「おはようございます」
「あ、ミアナ。おはよう」
冒険者ギルドに辿り着いた私は先に来ていた先輩達に挨拶をする。後輩もいるわけだが、基本的に裏で書類整理することが主なので受付には立っていない。
「それで、どうだった?彼と再会したんでしょ?」
「え、あ、は・・・はい」
いきなりそんな質問をされたので思わず持っていた鞄を落としてしまった。その中には朝食を作りながら用意したお弁当が入っていた。ユランも後で来るようなので一緒に食べようと思って2つ入れてきたのだ。・・・今の衝撃でぐちゃぐちゃになっていないわよね?
「にしてももったいない。ねぇ、彼と別れて勇者様とくっつく気はないの?」
「ないわよ。だって苦手なんだもの」
ああいう表しか見てこない連中は。まあ、毎日毎日贈り物されてウンザリしていたときに手ぶらで遊びに来たからという他の人に言ったところで理解しないだろう理由でユランに目がいくようになったんだけど。それをマネする人もいたけど、「アイツがこれで成功したなら俺も同じ方法で」っていうのは嫌いなのよね。
「でもねぇ。彼ってたしかやっとCランクになったばかりよね?それならSランクの勇者様の方が将来性があると思うんだけど」
「ああ、それなら私が昇進しないようにお願いしているのよ。Bランク以上からは指名依頼を出される対象になるから」
指名依頼なんて出されたらユランとの時間が減っちゃうじゃない。3年も我慢したのに。
「そ、そうなんだ・・・・まあ、幸せにね」
「はい。式の日付が決まったら教えますね」
「あ、うん。わかった・・・・。と、とりあえず交代の時間だから着替えた後は後よろしくね」
「はい。任せてください」
その後、私はギルドの制服に着替えた。お弁当を入れた鞄は持って行くことにした。お昼休憩になったらすぐに食べたいし。
「先輩。着替え終わりました」
「わかった。それじゃあ、後よろしくね」
そう言って先輩はロッカーに向かって行った。それを確認して私は先輩がいた受付に座る。
「ねぇねぇミアナ。ちょっといい?」
そう言いながら隣の受付を担当しているナファが話しかけてきた。いったいなんなんだろう。
「隣のミシータ王国で聖女が現れたらしいわよ」
「へー。そうなんだ」
聖女ねぇ。まぁ興味ないからどうでもいいか。
「それで、その聖女様なんだけど、なんと男爵の愛人の子だったらしいのよ」
「そうなの?」
「ええ。生まれた当時は体裁とかの関係で追い出したらしいけど、奥さんが子供を産まない体だったからかその子供を最近になって探したらしいのよ。そしたらなんとお母さんは既にお亡くなりになっていて、1人で生活していたらしいのよ」
「へー」
まぁ、貴族ではよくあることか。だからといって思わないことはなくはないけど。
「まあ、なんか訳がわからないことを口にしていたけどね」
「なんて言ってたの?」
「たしか『悪役令嬢がいない!!』とか言ってたのよね。なんなのかしら悪役令嬢って」
「さぁ?頭でも打ったんじゃないの?」
悪役令嬢ってなんのことだろう。いないってことだから姿がなかったのでしょうけど。・・・まさかとは思うけど、私だなんて言わないわよね。「悪役」って付いているから確実に嫌な役なんでしょうけど。
「それと、なんか人探しが行われているらしいわよ。なんでも公爵令嬢が家出したらしいのよ。名前はたしか『ミリアナ』だったはず。連れてきたら懸賞金が貰えるらしいわよ」
「・・・・・へぇ、そうなんですか」
あの人達、なんか調子に乗ってますね。どうせ「聖女がいれば魔物の大群なんてどうにでもなる」とか思っているんでしょうね。なる訳ないでしょ。最近見たかったんなら死ぬ気で上級の回復魔法を覚えさせないと間に合う訳がないじゃない。まぁ、実害がないわけだから放っておくけど。
「そうそう。なんかミアナに書状が届いていたわよ。ギルドマスターから渡すように言われたけど」
「私に?」
ナファに渡された書状を開いてみる。王様からの手紙で、そこには丁寧な文がびっしりと書かれてあったが、要約すると「勇者の恋人になれ」という文章だった。すぐに紙は破り捨てた。
「や、破り捨ててよかったの?それって王様からなんじゃ」
「別にいいのよ。勇者と恋人になれって王命らしいけど、絶対に嫌だから」
「いや、王命って・・・それって無視していいの?」
「大丈夫大丈夫。・・・・・これ終わったら落城させるから(ボソッ)」
「え?なんか言った?」
「ううん。なんでもないわよ」
・・・・・ここまでするかあの勇者。どうせ王女経由で王様に書かせたのでしょう。あの王様、娘に甘いって聞いたことがあるから。まったく。王子の一件でこりなかったのかしら。
「あ、噂をすればやって来たわよ」
そう言ってナファが入り口を見る。その視線の先を見て私はげんなりとした。なにせ、そこには勇者様がいたのだから。
「ミアナさん。今日も来ましたよ!!」
「おはようございます。今日はどのような依頼になさいますか?」
「・・・・・ミアナ。サラッと流したわね」
だって嫌だもの。というかなんか1人増えてない?具体的には黒装束の少女が。
「ミアナさん。正直になってください。ミアナさんも俺と同じ気持ちのはずです」
そうでしょうね。多分お互いに「しつこいなコイツ」とか思っているんでしょうね。
「絶対に幸せにしてみせます。だからお願いします!!」
本当にそう思っているんなら『魅了』と『奪取』のスキルを使わないでくれませんか?封印しちゃいますよ?・・・・というか他の冒険者の方々に使われたら面倒なことになるので『悪人以外に使用したら消滅』するように作り変えましたけど。
「だ、だったら、せめて食事でもいっしょに」
「すみません。私、恋人と一緒に食べるようにしていますので」
今度は『傀儡』と『支配』、それと『認識操作』ですか。これらも作り変えてっと。・・・にしても、この人本当に勇者なのかな?隠蔽してるスキルの中に『性王』とか『絶倫』とかそういうスキルがあるんだけど・・・・・まあ、これに関しては自己責任だからいじらないでいいや。
「わ、わかりました・・・・・でも、諦めませんからね!!」
いや、諦めてください。そう言って勇者は折り畳んだ髪を置いてクエストボードへと向かって行った。紙を開いて見てみると、そこにはこう書いてあった。
『俺も『解析』スキルは使えるんですよミリアナさん』
はあ、しょうもない。まぁ、こっちは放置でもいいや。別にバラされたところで問題ないし。だだミシータ王国が危機に晒されるだけだから。取り敢えず今回はこの国の城を落としますか。
???「なぁなぁ、うなじぃ」
(ゲンコツ)
???「痛い!?何をするんだ!!」
誰が爺さんだ誰が。
???「別に呼び方くらい良いではないか。それよりもだ」
あとでこの件について話し合いましょう。・・・それで、なんですか?
???「私の名前っていつ出るんだ?」
さぁ?神様なら自分で出してみてくださいよ。
???「どうやって出すんだ?」
神力です。
???「しんりょく?それってどうすれば出るんだ?」
1週間ほどチカラを込めてればいつかでますよ。
???「そうか!!ウォォォォォ!!!」
さて、1週間持ちますかねぇ。