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余裕があれば週1で投稿します。
朝がやって来た。ベッドには私とユランが裸で抱き合っている光景があった。私はユランの「ふぁ〜〜・・・・ん?え?あ、アァァァァ!!」という叫び声を聞いて目を覚ました。まだ寝ぼけているのか動揺しているユランにそのまま抱きつく。ネボケテルカラシカタナイ。
「み、ミリアナ!!起きてるよね。起きているんだよね?は、離れて!!当たってる。当たってるから!!」
失礼な・・・・・当ててるんですよ。
ふざけるのをやめて私たちはベッドから離れると私は朝食の準備を、ユランは装備の手入れ(私がしておくように言った)を始めた。今日の朝食は茹でた卵とソーセージ、それと黒パンだ。硬くてあまり美味しくないけど、そこまで生活に余裕があるわけでもないから柔らかくて美味しい白パンは買えない。まあ、次の給与からは白パンを買えるようになるんだけどね。
まあ、そんなことはともかく
「ユランが帰って来た。籍はいつ作ろうかしら」
私もユランも元々は公爵の家の者だ。でも、ユランが追放されたことで私も公爵家と縁を切った。
正直、あの頃の私は毎日にウンザリしていた。公爵家の長女である私に歯の浮いたセリフを言ってくる貴族や王族の人達。お父様に媚びを売ろうとして近づいて来る有力貴族たち。中には私と婚約したいと言ってくる人達もいた。
どれだけ身分や顔が良くても、私は幼い頃からユランだけしか映らなかった。いつだったかお父様が「会わせたのは失敗だったか」などと言っていたけど、私からしたら大成功だったと思っている。・・・・・ソーセージは割れないように沸騰する前に取り出してと。
それに、今の私がいるのはユランと出会ったからだ。剣聖様がユランの悪口を言ったから叩きのめしたし、賢者様が「ユラン様と違って貴女には魔法の才能がある」とか言ってユランを大衆の面前で貶したから子供の頃から賢者様が使った魔法を必至に再現し、小さい頃から鍛え上げた魔力を使って発動させて驚かせたりした。回復魔法が得意な理由はユランがしょっちゅう怪我をするから必死になって「死んでさえいなければ回復できる」ようになるまで練習したからだ。だから、ユランから婚約の申し出を受けたときはとても嬉しかった。まぁ、もし来なくても私から言っていたけどね。
それなのに周りはユランと婚約を解消して他の人を婚約者にした方がいいなどと言ってきた。まず前提が間違っているのに。
私はユランと出会ったから頑張っただけ出会って、ユランと出会わなければここまで頑張らなかったのだ。・・・・おっと、卵が茹で上がりそうだ。
それなのに遂にそのときがやってきた。ユランが公爵家を追い出され、私との婚約を解消させられたのだ。もちろんそのことは私には知らされず、いつのまにかユランの兄であるガナラ様と婚約させられていた。
ユランが追放されたのを知ったのはユランに会いにノージス公爵家に訪れたときだ。なぜかユランが一向に現れず、ノージス公爵家のメイドが入れた紅茶を飲むと睡眠薬が入っていたので何かおかしいと思った。
私は隙を作らないために薬や催眠、さらには魅了などが効かないように私の『スキルではないスキル』を使って私自身の身体を作り変えた。そのおかげで睡眠薬は効かなかったけど匂いや味、その他の情報から遅効性の毒であることがわかったのでしばらく様子を見ることにした。あと十数分で薬の効果が現れ出すときにガナラ様がやって来た。
その後の会話から私は追放されたユランとの婚約を解消され、代わりにガナラ様と婚約させられていたことを知った。どうやらこの件には私の家も関わっているらしく、おそらくこの睡眠薬の件は私の家も黙認しているだろうと思った。・・・・あれ?黒パンにつけるイチゴのジャムはどこに置いたっけ?
そして、ガナラ様が「婚約者なのだから逢瀬をするのは当然だよね」とにやけた顔で言った。その言葉を聞いて睡眠薬の効果が掛かったフリをすると、ガナラ様は私を抱え上げると自分の部屋に運び、自分のベッドに私を置く。そしてうっすらと目を開くと、ガナラ様がこちらに背を向けて服を脱いでいるのが見えた。そのとき、すぐ近くにガウンがあったのでおそらくそれに着替えるのだろう。
まあ、ユラン以外と身体を重ねる気は無かった私は特に道具も持っていなかったのでガナラ様の後頭部を殴って気絶させるとその場から立ち去った。
その後、私は自分の家に戻ると、当然のことながらお父様に驚かれた。そりゃあそのときはガナラ様に抱かれているはずの私が帰ってきたのだから驚くでしょう。
でも、一番ショックだったのは公爵家の人達全員に驚かれたことだ。つまり、知らなかったのは私だけだということだ。今にして思えば、あのとき着替えさせられた服装は簡単に脱がせられたものだったと思う。
それを知ってからの私の行動は早かった。以前から集めていたお父様がしていた色々な不正の証拠をきょうは・・・・交渉の材料にして公爵家との縁を切った。さらに口だけの約束にさせないために誓約書を書かせた。国王陛下や大司教様にも同じ物を書かせた。
書かせた後でまとめて説明したけど、それは私が収集していた魔物の素材を使って作った誓約書で、もし制約を破ったならその国に素材に使った魔物の強さに応じて魔物の大群が攻めてくるというものだ。たしか素材には『魔王軍幹部』とか『我が魔王だ』とか名乗っていた気がするけど、多分自称だろう。だって当時14歳だった私が倒せたわけだし。
その後、私は聞き込みなどをしてユランの下に辿り着いた。その翌日、念には念を込めて国の権力が一切効かないギルドの受付嬢に就職した。まあ、その街にユランがいることは分かっていたからユランを探しながら職を探していたところにちょうど良く募集していたから面接と筆記試験をして受かっていたわけだけど。
ユランを見つけた私は感極まって思い切ったことをしてしまった。なにせ、あのときユランに私という存在を刻み込まなければまたいなくなってしまう気がしたからだ。
それからというもの、私はユランに戦闘訓練をさせたり、『スキルではないスキル』の存在を教えたり、ユランの身体をこっそりと作り変えて少しずつ魔法が使える身体にしていった。
それらのかいがあって、ユランは私と肩を並べられる実力者になった。
それでもユランは驕らずに訓練は辞めなかった。終いには「修行の旅に出る」と言い言葉どおり旅に出て行った。
それと入れ替わるように勇者様が現れた。なんでも彼はこことは違う異世界から魔王を倒すために召喚されたらしい。ギルドの試験でギルドマスターと戦って勝ち、その結果Dランクからのスタートとなった。
初めに対応したのが私だったからかなぜか彼は私の受付にばかりやって来た。たまに食事に誘われたりもしたけど、ユラン以外の男の人とあまり2人きりになりたくなかった私は遠慮していた。まあ、ランクが上がるごとに女の仲間を増やしていたからというのもあったわけだけど。
勇者様は順調に、異例の速さでランクを上げていった。BランクからSランクへと上がった理由は魔王軍幹部の討伐だけど、秘密裏に、こっそりと身体を作り変えて弱体化させてどっこいどっこいにしたからな訳で、本来ならあのときの勇者様では傷を負わせることもできなかったはずだ。
そして、その後から私に対する本格的なアプローチが始まった。やれ綺麗な花畑を見つけた。やれ美味しい料理店を見つけた。やれドラゴンを仕留めてきた。などなど。正直しつこいと思った。私の方が長くこの街にいるんだからそんなものこっちの方が知っているとも思った。
そんなストレスがかかったばかりの生活だったが、やっとそれが報われたと思った。なにせ
「ユラン。朝食できたわよ!!」
「分かった。あと少しで片付くからそれが終わってから行く!!」
・・・・・こうして待ち望んでいたユランとの生活ができるわけなのだから。
???「怖れよ!!ひれ伏せ!!私が、神だ!!」
バサッ(←マントを翻した音)
ミリアナ「ハイハイ。凄いですね」
ユラン「ひぅ」
ミリアナ「ユラン?どうしたの?」
ユラン「い、いや、いま青いものが一瞬だけ見えて」
ミリアナ「・・・・・・お嬢ちゃん」
???「お嬢ちゃんではない。神だ!!」
ミリアナ「ちょっとこっちでお話ししましょう?」
???「え?あ、ちょっ。私をどこに連れて行く気だ。うなじ!!私を助けろ。聞こえているのかうなじ!!」
ズズッ。はぁ、甘露甘露。
???「のんびり茶を啜るなぁ!!」
まぁ、お茶は苦い方が好きなんですけどね。
???「どうでもいいわ!!」
その後、???は頭の?を!にして帰ってきたという。
???「う、う、う。私の、私のチャームポイントがぁ」
ハイハイ。可愛い可愛い。
???「ふざけるなぁ」
飴ちゃんいる?
???「グスッ。いる」
やっぱり可愛い。