救い
結論から言うと異常はなかった。
すっとんできた佐藤先生と近医の脳外科を受診し、処置とCT検査を受けたが特に何もなく、本日の安静を指示されただけだった。
それにしても最近の医療ってすげー。縫うのかと思ったけどホッチキスみたいなもので留めるだけなんだな。
佐藤先生は何度も俺に謝り、あの不良生徒たちと話をすると言ってくれた。こういう時の佐藤先生は頼もしい。これで少しは落ち着くといいのだけど。
「こいつは俺の連絡先だ。困ったことがあればかけて来い、助けになる」
電話番号の書かれたメモを受け取る。使うことはないと思うが、いざというときは頼らせてもらうことにしよう。
先生に送ってもらった後、ベッドで横になりながらテレビをつけた。おっ、ひとみんが映っている。やっぱアイドルはかわいいよな。
ピンポーン
おや、誰か来たようだ。テレビを消し、玄関のドアを開ける。
「は、はい、どちらさ――」
「こんばんは」
「つ、土屋さん⁉」
制服姿の土屋さんが玄関前に立っていた。手には大きな袋を持っている。もう夜遅くなのにどうしたんだ?
「あ、あのね頭を怪我してるし、ご飯に困ってるかなって思って来たの。……迷惑だったかな」
全力で首を横に振る。振りすぎて千切れそうだ。
ちょうどごはんの準備をするところだったと伝え、彼女を招き入れた。幸い昨日片付けたばかりだったので見られて困る物はない! ……はず。
「よかった、じゃあお邪魔します。すぐに作るから」
土屋さんがうちに来て料理を作ってくれる……こんな幸せがあっていいのか?
「レンジ借りるね」
え?
チーン
「さあ、召し上がれ!」
机の上に並べられた、レンジでチンした冷凍食品の数々。これ土屋さんの弁当箱に入っていた物ばかりだ。
もしや彼女にとってはこれも『料理を作った』と言うことになるのか? いや漫画みたいなダークマターを作られても困るが、これはこれでくるものがある。
「ありがとう。……ところで土屋さんは、どうして俺にここまでしてくれるの?」
食べる前にずっと思っていた疑問をぶつける。
あの時、俺は土屋さんを助けたがそれまで関わりは一切なかった。俺なんかと関わっていれば、土屋さんから人はどんどん離れてしまうと思う。
なのにどうして、俺なんかの為に……。
そんなことを考えていると、いつの間にか土屋さんの顔が目の前にあった。
驚いて後ろに下がろうとした俺の手を土屋さんが掴む。
「あの時、私を助けてくれたのはキミだった。私と一緒にいるだけでキミを責めるだけの人たちではなく、キミが手を差し伸べてくれた。だからキミが困っていたら同じように助けてあげたいって思ったの……そんな理由じゃダメかな?」
胸が高鳴るのを感じた。恥ずかしくてなって顔が直視できない。
舌を出して恥ずかしそうにする彼女の言葉に、俺は既に救われていた。