クラス替え
「えー突然の事ですがクラス替えが行われることになり、一組の鈴木くんがこのクラスの仲間になりました。仲良くしてあげてくださいねー」
「よ、よろしくお願いします」
壇上で田中先生に紹介され、新たにクラスメイトになった二組の皆に頭を下げた。拍手で歓迎する土屋さんと猫矢さんの姿が見える。
昨日の放課後、佐藤先生に呼び出されるといじめについて問いただされた。正直に打ち明けると、佐藤先生は憤慨し、俺に頭を下げた。
「二組の土屋から話は聞いた。気づいてやれなくてすまなかった」
佐藤先生はクラス替えを提案してくれた。
基本的に一年に一度しか行われないクラス替えだが、この高校では何か問題があれば特例として認められているのだ。
俺はこの提案を呑んだ。友達もいないし、未練はない。
「……わかった、田中先生には俺から伝えておく。悪いが明日は真っ先に職員室に来てくれ」
そして今に至る。二組の中にも俺を歓迎していない目線を向ける者も当然いた。だが土屋さんと猫矢さんという味方がいるだけで、だいぶ心の持ちようが変わった。
「それじゃー鈴木くんの席は猫矢さんの横ねー。猫矢さん―授業の進み具合に差があるだろうから悪いけどフォローよろしくねー」
「わかりましたわ」
隣の席に着くと、遠くに見えた土屋さんがいたずらに成功したような顔で、くすくすと笑っていた。
猫矢さんは仕方ないと一息つく。
「お姉さまに感謝しなさいね」
「あとでお礼を言うよ」
こうして俺の新しい学校生活が始まったのだが、授業内容が一組よりだいぶ進んでいたため、早々泣く羽目になった。
「鈴木くん駄目ねー、ダメダメねー」
「……はい」
自分では頑張ったつもりだったが、まるっきりダメだった。
「これは補習が必要ねー」
「っ‼ そ、それだけは何とか――」
また土屋さんを一人にしてしまう。それだけは絶対に避けなくては。その時、土屋さんが手を上げた。
「先生、今日から私が彼の勉強を見ます」
「土屋さんがー? うーん、用事とかあるんじゃないのー?」
「問題ありません」
田中先生はしばらく考えるようなそぶりを見せると「お願いするねー」と土屋さんに一任した。
「……ごめん」
「大丈夫だよ、一緒にがんばろうね」
俺のせいで迷惑をかけっぱなしだ、何とかしなくては……。
自宅に帰ったあと、徹底的に部屋を整理し、勉強しようとしたら寝ていた。