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ぼっちの俺が助けた相手は学園一の美少女でした。だけど世の中いい事ばかりじゃない  作者: どじょっち
ぼっちの俺が学園一の美少女を助けてしまった
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いじめ

 教室に入ると、昨日と同じようにみんなの視線が集まるが誰も近づいてこない。

不思議に思いながら席に着こうとすると原因がわかった。俺の机に大量の落書きされていたのだ。

 死ね、きもい、いい気になるな等、悪意に満ちた言葉の数々が刻まれている。

 思わず皆を見渡した時、不良グループたちが此方を見てにやにやと笑っているのが見えた。

 怒りを抑えながら落書きを雑巾で拭いた。誰も手伝ってくれなかった。



「鈴木君、今日も一緒に食べようよ」


 昼休みになり、昨日と同じように土屋さんが教室にやって来た。嫉妬の視線が俺に集まる。陰口も聞こえて来た。


「……何かあったの?」


 聡い人だ。隠そうとしても見透かしてくる瞳から、逃げるように顔を逸らす。


「私の、せいなのかな?」

「違う!」


 思っていたより大きな声が出てしまい、土屋さんがびくっと体を震わせる。何やってんだよ俺、八つ当たりなんて最低だ。


「ごめん……屋上行こうか」

「……うん」


 屋上に着くまで会話はなかった。

 気まずい空気のまま屋上の扉を開ける。昨日とは違い、猫娘だけがそこにいた。


「お待ちしていましたお姉さま! ……また貴方ですの?」


 俺の顔を見るなり露骨に嫌そうな顔をする猫娘。だが昨日怒られたためか、それ以上ぐちぐち言ってくることはなかった。


「猫矢さん、今日もいたのね」

「お姉さまのいるところでしたら、たとえ火の中水の中ですわ」


 猫娘もとい猫矢さんがどうしてもと言うことで一緒にご飯を食べることになった。正直、気まずかったので彼女の存在はありがたい。話している内にずいぶんハイテンションな子だとわかり、暗い空気も吹き飛んでいた。

 またパンを取り出そうとすると、土屋さんが弁当箱を突き出してきた。


「これ、昨日約束したお弁当だよ」

「あ、そうだったね」

「この人のためにお弁当を作ったのですか⁉ なんてうらやましい……」


 笑顔で頷く土屋さんを見て、猫矢さんが口をあんぐり開けている。この子、感情が思いっきり顔に出るから見ていて飽きないな。

 弁当はとても美味しかったので、すぐ食べ終わってしまった。


「ご馳走様。ありがとう、とても美味しかったよ」

「また明日も作って来るからね。ところで鈴木君、さっきのことだけど――」

 

 ごまかせたと思っていたけど、そういかなかったか。ただでさえ疲れている土屋さんに心配かけまいと、必死ではぐらかすが厳しい追及に負け、机に心無い落書きがされていたことを正直に話した。


「そんな、鈴木君が……」

「卑怯ですわ!」


 恐らくいじめはエスカレートしていくはずだ。ぼっちだった奴が、いきなり学園一の美少女と仲良くし始めたら嫉妬されるのも当然だし、狙いやすいだろう。


「俺の問題だから、何とかするよ」

「これは一人でどうにかなる問題ではないですわ!」


 猫矢さんが怒りながらギャーギャーと喚き散らしていた。これだけでも優しい性格だと言うことが分かる。

 土屋さんに視線を向けると、何やら考え事をしているようだった。


「わかりました、お姉さまの友達は私の友達。この猫矢がいじめてくる相手をぶん殴ってあげますわ」

「気持ちは嬉しいけど、何もしない方がいい。下手をすれば猫矢さんもいじめの対象になる」

「ですが……」

 

 人間と言うのは姑息だ。気に入らない人物を集団で排除しようとする。もしそれを守ろうとすればその人物を、守っていたはずの人物さえが狙い始める。

 土屋さんとは帰宅時だけ合流し、学校では関わらない方がいいだろう。


「……一人で決めないで」


 明らかに土屋さんが怒っていた。何か悪いことをしただろうか?


「自分で勝手に決めつけて、私たちの思いを聞こうともしないのはよくないよ」

「そうですわ! 私たちはもう友達なのです!」

「だ、だけどそれならなおさら――」

「鈴木君」


 鋭い視線に射抜かれ、口を紡ぐ。

 怖い、土屋さんにもクラスの奴らと同じように見捨てられたくない。パニックになり、俺は頭を抱えて震えることしかできなかった。


「大丈夫だよ」


 怯える俺の頭を彼女は優しく撫でてくれた。

 それだけで恐怖が消えていく。


「私が何とかしてあげるからね」


 土屋さんの優しい声は何よりも頼もしかった。



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