放課後
放課後。宿題を忘れていた俺は先生にこっぴどく怒られ、補習をする羽目になった。
いつも以上に先生が厳しく、補習が終わったのは八時前だった。
「……これで終わりだ。今度から忘れんなよ」
担任の佐藤先生は仏頂面を隠さず教室から出て行った。あの先生、基本的にはいい人だが気分屋なところが玉に瑕だ。どうせ何か嫌なことがあったから八つ当たりしてきたんだろう。いい迷惑だ。
荷物を片付け誰もいなくなった教室を後にする。運動場の明かりも消え、すっかり暗くなっていた。靴を履き替え、明かりのついた校門を抜ける。
「鈴木君」
「うわ!」
突然の声に驚いて、思わず変な声が出てしまった。呼びかけて来た声の主がくすくす笑いながら姿を見せる。
「ふふっ、ごめん驚かせちゃったね」
「つ、土屋さん⁉ 何でこんな時間までいるの?」
「キミを待っていたんだよ」
土屋さんはおかしそうに笑いながら、こちらに腕を組んでくる。
恥ずかしさを覚えながらも、その手が僅かに震えていることに気づいた。
「昨日のことがあって一人で帰るのは怖かったんだ。両親も忙しくて来れないから、キミの補習が終わるまでずっとここにいたの」
組んでいる腕の力が強くなる。
こんな時間まで怖がっている土屋さんを一人にしてしまい、胸をしめつけられる思いだった。
安心させるため土屋さんの頭を撫でる。
嫌がるかもしれないと思ったが、きょとんとした顔を浮かべた後大人しく撫でられていた
「あ……ありがとう、鈴木君は優しいね。もう大丈夫だよ」
帰り道は怖くならないように二人で話をしながら帰った。学校生活や趣味のこと、好きなものやら嫌いなことまでたくさん話した。
気が付けば、どもることなく自然と話せるようになっていた。
「あ、家に着いたね。ありがとう鈴木君、また明日」
「うん、また明日」
特に何事もなく無事帰宅することができ、家に入る。
そして部屋がぐちゃぐちゃなままだったことを思い出した。