ご飯も豪華でした
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「ここはこうして――」
「なるほど」
思っていた以上に勉強は捗った。
すらすらと頭に入ってくる。
「氷さんって教えるの上手だね」
「そ、そうかな? えへへ」
褒められて照れる氷さんがめちゃくちゃかわいい。
なんだかいい匂いもするし普段よりもかわいく見える。
――あれ? 胸がどきどきしてきた。なんだか顔も火照ってきてる。
「鈴木君?」
落ち着け俺。氷さんと二人きりでいることはぜいたくな話だがよくあったことだ。
「顔が赤いよ、体調悪いの?」
おでこをピタッと合わせられた! 顔が近い! 頬から炎が出そうだ!
気のせいか氷さんの顔も赤くなっていく。
なんとなくお互い気まずい雰囲気になったとき、別室のドアが音を立てて開かれ、中から火富さんが出てきた。
どれほどの教育が行われたのだろうか、灰のように真っ白になっている。
「ベンキョウ、タノシー。アタマヨクナル、サイコー」
「今日はこのぐらいでいいでしょう。明日は今日以上に厳しくいきます」
「ヒギィ‼」
あまりのショックで火富さんが垂直にぶっ倒れてしまった。よっぽどつらい目にあったのだろう、蚊藤は恐怖に震えていた。
「わ、我も最下位だったらこうなっていたのか」
「ちゃんと勉強しなさいってことよ」
「うん、我反省する」
この勉強会は蚊藤の人生に大きな影響を与えたのかもしれない。
氷さんが注目を集めるように手を叩く。
「今日の勉強会はここまでだよ。今から夕食を用意するからちょっと待ってて」
「もうそんな時間か」
気づけば陽が沈んで外が暗くなっている。
こうなるまで夢中で勉強したのは始めてのことだった。
勉強道具が片付けられると、次々と豪華な料理が運び込まれて机に並べられていく。
見たこともない料理の数々に思わず喉が鳴る。ほかのみんなも料理に興味津々の様子だった。
「マグロの生け作り……?」
「ステーキもありますわ。ずいぶん分厚い……」
「シュールストレミング開けようぜ」
「「やめろ」」
蚊藤からシュールストレミングが回収されていく。
どうやら手違いで出してしまったそうだ。なんであんなものなんで保存してるんだ?
「気を取り直して、どうぞ召し上がれ」
「「「「いただきまーす‼」」」」
まずはステーキを食べてみる。
噛めば噛むほど肉汁が溢れてとってもジューシー。
サラダは新鮮でシャキシャキ、魚介類も彩りが鮮やかで見ても楽しく、食べてもおいしい。
「いつもこんな豪華なご飯食べてたの?」
「そんなわけないよ。皆が来るって聞いて、うちのシェフが張り切っちゃっただけ」
「専属のシェフがいるだけでやばいわよ――でも本当においしいわ」
「お前食いすぎだろ……」
料理が瞬く間に香取さんの胃袋の中に消えていく。
あの華奢な見た目のどこにあれほどの量が入っていくのだろうか。
「うふふ、料理はまだまだあるからいっぱい食べてね」
マジかよ。これだけでもテーブルが埋まるほどなのにまだあるのか。おいしいのだがこの後を思うと胃がきりきりしてきた。
食事中失礼だが、先にトイレを済ませることにした。
シュールストレミングはまずい