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メラ子ちゃんは見た

不定期更新ですが見ていただけると嬉しいです。

 私だ、土屋火富だ。だが今日はメラ子ちゃんと呼んでくれ。

 現在鈴木竜一を尾行している。

 

 なぜそんなことをしているのかって? ――鈴木竜一がデートしていたからだよ‼ 私と氷ちゃんというものがありながら‼


 ふう……少し逸れたけど話を戻そう。

 今日は学校が休日だったため鈴木竜一を遊びに誘ったのだが断わられてしまった。

 そのため氷ちゃんに何かプレゼントでも買ってあげようとこうして街に繰り出しているところで見てしまったのだ。

 笑顔の鈴木竜一が女性と談笑しながら歩いているところを!

 年上でほんわかした雰囲気の女性だ。私が見てもかわいいと思う。

 

 こんな状況を過ごし分けにはいかない――というわけで慌てて尾行を始めたのだよ。

 慣れ親しんだメラ子ちゃんスタイルだが帽子のデザインを少し変えているためばれることはあるまい。

 ふむふむ、どうやらスーパーに買い物に来たみたい、なるほど夕食の材料がなくなったんだね。

 あ、買い物袋持ってあげてる。そういうところはポイント高いなあ――っじゃなくって! まさか手料理をふるまってもらうの? だからそんなに嬉しそうなの?

 ガッデム! この浮気者!

 氷ちゃんになんて言えばいいんだよぉ……。


「ちょっとそこのきみ」

「こんな時に誰!?」 


 怒りながら振り向くとそこにはお巡りさん。

 改めて自分の行動を振り返っていると、メラ子ちゃんスタイルで電柱に隠れながら人を尾行している。

 ――これはまずい。


「ちょっと話をきかせてもらうね?」

「はい」


 結局有名税で注意だけにしてもらえた。サインで買収したわけではない。

 だが二人を見失ってしまい、日も暮れ始めていた。


 仕方なく、重い足取りで家へと帰ると氷ちゃんが迎えてくれた。

 せめて、今はさっきのことを秘密にしておこう。


「おかえり」

「うん……ただいま」

「姉さんどうしたの?」

「え? 何でもないよ」

「目じりに涙をためて何でもないことないでしょ。ほら早く入って」

「――うん」


 居間に入りソファに座る。

 なんだかんだ色々なことがあったので、心地よさから思わずため息。


「はいどうぞ」

「ありがとう」


 氷ちゃんが入れてくれたココアを一口ごくり。

 甘いけど思った以上に熱かったので舌を火傷した。


「それで、何があったの?」


 結局氷ちゃんに隠し事などできず、鈴木竜一が女性と二人きりでデートしていたことを話してしまった。

 氷ちゃんの表情をうかがうが無表情のままだ。


「信じたくないとは思うけど事実なんだ。うう……」

「……」

「氷ちゃん?」


 返事はない。


「えい」


 柔らかいぷにぷにほっぺをつついてみる。

 普段の氷ちゃんなら怒るはずなのに反応はない。


「気絶してる……! 氷ちゃーん戻ってきてー!」



 次の日。

 登校前にアパートから出てきた鈴木竜一を氷ちゃんと捕まえた。 



「鈴木君……」

「鈴木竜一……」

「二人ともどうしたの?」

「私と氷ちゃんというものがいながら、この浮気者ぉ!」

「なになにどういうこと!?」


 わけがわらないといった様子で目をぱちくりさせている。  

 

「ええい、とぼけても無駄だあ! 昨日デートしていたでしょ!?」

「デート? ……もしかして――」

「あらあらなんの騒ぎ?」

「え?」


 隣の部屋のドアが開くと昨日見た女性が出てきた。

 しかも氷ちゃんとも見知った関係のようで和やかに挨拶を交わしている。 

 どういうことなの?


「あの人はアパートの管理人さんだよ。いつもお世話になっているからたまに買い出しを手伝っているんだ」


 鈴木竜一の家にはよく行っているのに初めて知った衝撃の事実。

 そうかそうか大家さんだったのか、なら仕方ないよね。


「……」


 絶対零度の沈黙にあふれだす冷や汗。

 こちらを見る氷ちゃんの瞳から光が消え失せている。 

 ――――これはまずい。


「姉さん?」

「ヒュ、ヒューフヒュー」


 とっさの口笛でごまかす。

 なんてきれいな音色なのかしら。


「正座」

「はい」


 氷ちゃんのお説教はとても長かった。



最後まで見ていただきありがとうございました。のんびり投稿を続けていきます。

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