私の幸せ
メラ子ちゃん視点が書きやすいのです。
最近氷ちゃんの様子がおかしい。
ボーっとしているかと思えば、急に顔を赤らめ首をぶんぶん振ったり、可愛さが増している。
どうしたの? と聞いてみても「なんでもない」とそっけなく返されるだけだ。
これはあれですな、恋する乙女力がアップしたんですな。
しょうがない。ライバルに塩を送る形にはなるけど、姉として一肌脱ぐとしますか。
◇
「う~ん! おいしい!」
「本当だ、甘くておいしいよ」
ふっふっふ、こじゃれたカフェでパフェを食べ合う二人――これはどこからどう見てもカップルでは?
同士猫矢はどう思う?
「本当はすぐに乱入したいところですけど、あんなに幸せそうな土屋お姉さまに迷惑かけるのも気が引けますわ。ここは大人しく見守ることにします」
「同感だよ。だけどそろそろ周囲の目線が気になる、場所を移そうか」
メラ子ちゃんスタイルの二人が店内を覗いていれば嫌でも目立つ。
帽子の色だけを変えてからカフェに入り、ちょうど氷ちゃんたちから死角になるような席に座る。
注文は適当にコーヒーで済ませた。
「私は熱いのダメですのでオレンジジュースを」
好きにするといい、私のおごりだ。
なぜこのような状況になっているかと言えば、私が氷ちゃんと鈴木竜一を誘い、当日来れなくなったと伝えた。そして同士猫矢を呼び出し、その状況をこっそり撮影していたというわけだ。
――盗撮だって? 知らんな。
突然二人きりになったので本人たちは気づいていないと思うが、どこからどう見てもデート! これで二人の距離がさらに縮まれば万々歳だ。
「ですがいいんですの? 先輩も鈴木と仲良くしたいのでは?」
「私にとってはどちらも大切な人なんだよ。二人が幸せなら私も幸せなんだ」
「――不器用な人なんですね」
「そうかもね」
鈴木竜一に対するこの想いも本物だけど、氷ちゃんの想いも知っている。
氷ちゃんに負けたくはないけど、幸せになってもらいたい。
あぁ、我ながらなんて面倒くさい女だ、こんな一面は彼に知られたくないなあ。
「――気が変わりました。貴方も混ざってきなさい!」
「ちょ、ちょっと‼」
突然席を立った猫矢さんに押し出され、店中の注目が集まる。
当然、それには氷ちゃんと鈴木竜一の視線もあるわけで――
「姉さん?」
「火富さん⁉」
「あ、あはは……」
もう笑ってごまかすしかなかった。
――恥ずかしい、顔真っ赤なんだろうなぁ。
「思っていたより用事が早く終わったから来ちゃった……混ざってもいいかな?」
「勿論よ、一緒に食べましょう」
二人は怒ることもなく快く受け入れてくれた。
内心申し訳なさを感じながら、店員に椅子を用意してもらい、氷ちゃんの横に座る。
「そうそう、彼女も混ぜていいかな? 素直になれない猫ちゃんなんだよ」
「だ、だれが猫ちゃんですかー⁉」
猫矢さんも合流し、四人で談笑することになった。
皆で過ごす時間は楽しかった。
はぁ……こんなことなら最初から一緒にいればよかったなぁ。二人きりとかデートとか、そういうのは自然とその形に落ち着くんだろうね。
頼んだコーヒーが机に置かれたので、それを一気に飲み干す。熱い!
「ど、どうしたの火富さん?」
「気にしないで、自分を戒めていたの」
「??」
やっぱり熱かったのでパフェを追加で頼んだ。
二人を見ていたら欲しくなっちゃたんだよねぇ、甘いもの大好き。
もしかしてメラ子ちゃんのほうがメインになってきているのでは?