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火富さん⁉

あの事件からしばらく経った。

火富さんが襲われたことはニュースでも話題になり、スキャンダルで批判的だった風潮は鳴りを潜めた。

俺と土屋さんもマスコミに囲まれたが、火富さんの事務所の人たちが庇ってくれて大きく目立つことはなかった。


火富さんとはしばらく会えていないが、普段通りの日常が戻って来た。

俺は朝食を机に並べ、ゆっくり腰を下ろす。

ご飯に味噌汁、目玉焼き――うん、実に朝食らしい。

そのまま箸を手に取りテレビを付けた。 


『速報ひとみん、アイドル引退!』


朝のニュースで流れたそれを見て、思わず箸を落とした。

チャンネルをいくら変えても同じようなことしか報道していない。


ショックだった、アイドルの火富さんにはたくさんの元気をもらって来た。

復帰してこれからも活躍が見られると思っていたのに、もうテレビでひとみんとしての活躍を見ることができない――何だか胸に穴が開いたような気持になった。


食欲が一気に無くなり、軽くご飯だけを飲み込んで家を出た。

今日一日は憂鬱な気持ちで過ごしそうだった。


「おはよう鈴木君」

「土屋さん……」


アパートの前でいつも通り土屋さんが待っていた。

一緒に並んで学校へと向かう。

 

表情にはっきり出ていたのだろう、土屋さんは心配そうに声を掛けて来た。


「どうしたの鈴木君? 元気ないけど」

「土屋さん朝のニュース見た? 火富さんがアイドル止めるって――」

「えっ、私はずっと前に聞かされていたよ? てっきり知っているものだとばかり――」

「え?」


もしかして俺だけ聞かされてなかったの? なんで??

 

「――――ふふっ、何でだろうね?」


土屋さんの微笑む理由がわからず、頭を抱えた。



――――

――


結局何もわからないまま学校にたどり着いた。

何やら教室が騒がしい、悲鳴がここまで響いている。


気まずいが意を決してドアを開けると、指を天に差した華麗なポーズを決めた小柄な女子生徒の背が見えた。

彼女を取り囲むようにクラスメイトが集まっている。


――何者だ? 

そう思っていると、女子生徒が振り向き――――、


「ヘイ! そこの鈴木竜一‼」

「火富さん⁉」


どうしてこうなった?

何故か俺の前にメラ子ちゃ――火富さんがいる。

再確認だがここは俺の通っている学校で火富さんは通っていない。しかし火富さんも同じ学校の制服を着ているように見えるが――、


混乱する俺や周囲の目を気にせず、火富さんは笑顔を浮かべながら腕を組んできた。


「うわわ」

「この学校に転校してきたんだよ! 学年は違うけどよーろしくー‼」

「どどどどどどどどど、どういうことですの⁉ あのひとみんが鈴木に引っ付いていますわ‼」


叫ぶ猫矢さんの気持ちも無理はない。

話題沸騰中の元アイドルがいきなり転校してくれば騒ぎになる。こうやって一人の男子生徒にべったりならばなおさらだ。


助けを求めるように土屋さんへ視線を向けるが、いたずらが成功したようにくすくすと笑われるだけだった。

いつもなら止めてくれるのに、今日は寛大だ。


「アイドル止めたこと黙っていてごめんね。アイドル以上にやりたいことができたの」

「それって……?」

「むふふ、ひ・み・つ‼」


火富さんは笑った。

テレビで見ていた時と同じ――いや、それ以上の笑みだと思えた。


最後まで見ていただきありがとうございました、これにてこの章は完結になります。メラ子ちゃんは書いていて楽しかったです。

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