少女の思い3
失敗した。
昨日の出来事を写真に撮られ、週刊誌に載せられた。
楽しすぎて完全に油断していた。
「火富、しばらくここに来ない方がいい。家にいろ」
「――わかりました。ごめんなさい」
「気を付けてな」
事務所にかかり続けている電話対応に追われる皆を背に、私は一人家を目指した。
昼間の平日で、人気のない通りを俯きながら歩く。
私がしでかしたことなのに、皆が庇ってくれた。
悔しくて涙があふれ出てくる。
私だけがつらい目に合うのならいい、だけど私のせいで皆に迷惑をかけてしまったことがつらかった。
氷ちゃんが心配してかけてくれた電話も大丈夫だと突っぱね、スマホの電源を切ってしまった。妹に八つ当たりするなんて最低だ。
ふと脳裏に鈴木竜一の顔が過る。
――――彼にも迷惑をかけてしまった。
私の我儘に付き合ってくれて、氷ちゃんが惹かれている優しい彼。
声が聴きたくなって、スマホに手が伸び掛けたが止める。
彼には氷ちゃんがいる、私の都合に巻き込むわけにはいかない。
そう思えば思う程、彼の顔が浮かぶ。
私に手を差し伸べてくれた、優しく笑う彼の顔が――
「こんばんは、ひとみんさん」
そんな時、首からカメラを掛け薄気味悪い笑みを浮かべた男が現れた。
何故ばれたと思ったが、すぐ変装し忘れていたことに気づいた。
幸い他に人はいない、面倒事になる前に逃げよう。
「昨日はどうもありがとう。おかげでうちの懐があたたかくなったよ」
「――どういうことですか?」
つい足を止めてしまう。
昨日のこと? まさか――!
「お前の写真を週刊誌にリークしたのは俺だ」
そう言って男が見せつけるように写真を取り出す。
ゲームセンター、動物園で鈴木竜一や氷ちゃんと遊んでいた写真が並べられていた。
大切な思い出が穢されたように感じた。
「わざわざ私に接触してきて何が狙いですか?」
「決まっているじゃないか、金だよ金。懐は余裕があればあるほどいい――何が言いたいかわかるな?」
「これ以上写真を公開されたなければ金をよこせ――ってことですね」
「話が早い、だがそれだけなわけないだろ?」
男が笑みを深める。
自身のためなら他人を傷つけることを厭わない、残忍で狡猾な笑みだ。
ここで助けを求めれば私は助かるかもしれない。
だけど、そうすれば男は徹底的に私たちを責めるだろう。
ただでさえ事務所の皆や、氷ちゃん、鈴木竜一に迷惑をかけてしまっているのにこれ以上はかけられない――
男の言うままに裏路地へ連れて行かれた。
薄暗く、誰もいない。
男の手が私に迫る。何をされるかなんて想像したくない。
誰か、助けて――
「火富さん‼」
そんな時だった。
私が心の中で助けを求めた人――鈴木竜一が立っていた。