昼休み
俺も好きでぼっちをやっているわけではない。
自分から話しかけるのが苦手で、気づけば俺を除いた友達グループができあがってしまっていたのだ。
そのため普段は誰とも話すことなく、寝るか読書をして休み時間をつぶしていた。
「おい、お前なんで土屋さんと一緒に登校してきたわけ?」
昼休みになった瞬間、同じクラスの不良っぽい奴が、数人の仲間と机を囲んできた。
表情から歓迎されていないのは明白で、逆にイラついているのが伝わってくる。
他のクラスメイトは自分とは関係ないと無視を決め込む者、いい気味だとせせら笑う者の二組に分かれていた。
昨日の出来事を馬鹿正直に話すわけにはいかないので、適当にはぐらかすことにした。
「べ、別に。家が近いから仲良くなっただけだ」
不良が机を蹴り、身体が揺れたかと思えば胸倉を掴まれた。
「てめえみたいな根暗野郎と土屋さんが釣り合うわけねえだろうが。目障りなんだよ!」
不良が拳を振り上げる。俺は痛みに耐えるよう、目をつぶった。
「――何をしているのかしら?」
声の方へ向くと土屋さんがいた。
殴られようとしていた俺の姿を見たのか、その表情は今まで見たことのないぐらい冷えきっていた。
不良は掴んでいた手を離し、青ざめた顔で言葉を紡いでいく。
「土屋さん……! こ、これは違うんだ。こんな奴キミに相応しくないと思って――」
「私の大切な人を侮辱しないで」
クラスがざわめく。俺は嬉しさと恥ずかしさで、黙って俯くことしかできなかった。土屋さん、男前すぎるだろ。
不良たちはじりじりと迫る土屋さんの圧に負けたのか「すみませんでした!」と謝りながら逃げ出した。
「大丈夫⁉ ケガとかしてない?」
「だ、大丈夫。助けてくれてありがとう」
土屋さんはすぐに俺の元まで駆け寄り、無事なのを見て胸を撫で下ろしていた。
男としては情けないのかもしれないが、守ってもらえて嬉しい気持ちで一杯になった。
「と、ところでどうしてここに」
わざわざこのクラスまで来たということは、何か急ぎの用事があるのではないだろうか。
土屋さんは本来の目的を思い出したのかはっとした表情を浮かべると、頬を赤らめ恥ずかしそうにしながら口を開いた。
「あ……あのね、もしよかったら、一緒にご飯食べない?」
がたっと机が揺れる音が響く。クラスメイト達が驚愕の表情で立ち上がっていた。
土屋さんは「ダメかな?」と不安げにしている。そんな顔されなくても、ぼっちめしの俺には断る理由はない。喜んで了承した。
「やった! じゃあ屋上に行こうよ、そこで食べるのが好きなんだ」
俺は土屋さんに手を掴まれると、そのまま屋上へと向かうことになった。
クラスから出る際の男子生徒達の殺意と嫉妬のこもった視線は恐ろしかった。