みんなで動物園に行こう1
「ヘイ! 二人とも待ちわびたよ! 準備はオーケイ⁉」
「お待たせ、火富さ「おーっと! 今日の私はメラ子ちゃんだぜ?」――わかったよメラ子ちゃん」
日曜日、俺と土屋さんは火富「メラ子ちゃん」――メラ子ちゃんの誘いを受けて動物園にやって来ていた。
長い列を並び入園すると、早速土屋さんは子供の様に目を輝かせて動物たちに見入ってしまい、先へ先へと進んでいく。
「芸能活動って大変そうだけど、仕事は忙しくないの?」
「気にすることはない! なんとでもなるさ……」
そう言うメラ子ちゃんは死んだような目で遠くを見ていた。
おそらく、この休みを取るため莫大な仕事量をこなしたのだろう。ならばメラ子ちゃんにも精一杯楽しんでもらいたい。
「メラ子ちゃん、行こうか」
「え? あ、あぁわかった」
メラ子ちゃんは差し出した手を戸惑ったように掴む。
早くしないと動物に夢中な土屋さんを見失ってしまう。
「キミの手は温かいね」
「突然どうしたんだ?」
「――――いや、忘れてくれ。それにしてもキミってぼっちのわりに結構大胆だよね? 女の子に手を差し出すなんてやるぅー!」
「め、メラ子ちゃんは話しやすいし、小柄で子供みたいだからこのくらいの扱いでいいんだよ」
「むふふー! 違いない! 前と同じように接してくれたまえ!」
急に走り出したメラ子ちゃんに引っ張られる形で土屋さんを追いかける。
その間、手は握ったままだった。
「あ、姉さ――」
土屋さんはこちらを見て固まったかと思えば、頬を膨らませながら反対の腕を組んできた。
何故だ、前々から思っていたがこの姉妹はどうして腕を組みたがる? 胸が当たっているが言い出せない、恥ずかしい。
「ふふっ、それじゃ三人で回ろうか。エスコートは男の子だしキミに任せたよ?」
土屋さんも頷き異論はないらしい。
とりあえずパンフレットのおすすめコースを行く事にしよう。
「んー無難で面白味はないけど、手堅いからほんのちょっとポイントアップかな?」
うるせえ、ぼっちにどこまで期待してやがる。
こちとら家に引きこもってネットサーフィンとゲームが日課なんだぞ、動物園みたいなリア充ご用達の場所を案内なんてできるか!
「まあまあ、そう拗ねないで。冗談だから、楽しんで行こう!」
「おー」
結局、道順通りに動物たちを見ていくことになった。
鳥にエサを上げようとして突かれたり、唾を吐きかけられた。
パンダは寝ていて動かなかった。
猿に荷物を奪われかけた。
ライオンにうぎゃー。
――動物園ってすげー。