メラ子ちゃんと遊ぼう2
「ヘイ鈴木竜一! また会ったな!」
学校での帰り道、指を天に立ててポーズを決めたメラ子ちゃんと再会した。
今日は土屋さんが用事で先に帰っている。俺が一人でいる時を狙いすましたかの様に現れたな。
相変わらず帽子にサングラスとマスクをつけた怪しさ全開のスタイルだ。しかし着ている服は前も思ったがずいぶんおしゃれだな。
「前回でキミが悪い奴じゃ無いことはわかった! だがまだだ! まだ私は認めないぞ!」
「何をだよ?」
「気にしなくていい! じゃあ今日はどこに行こうか?」
テンション高めな言動に惑わされやすいが、肝心な所をはぐらかしてくる。
――話し合える場所が必要だな。
――――
――
「おおおーう! 今回はカラオケですな! 私結構音楽にはうるさいけど、キミはどんな歌を聞かせてくれるのかな⁉」
「俺が歌えるのは、テレビで流行っているものかアニソンぐらいだ」
「構わなーい! 自信を持って、最後まで歌いきることが大切なんだよ! ――っというわけで一曲目をどうぞ」
ならばと大好きなロボットアニメの曲を入力した。
毎回一人でカラオケに来た時歌うので自信がある。
さらにメラ子ちゃんがマラカスを振りながら盛り上げてくれたので、気持ちよく歌うことができ、点数は八十五。なかなか高得点だ。
「やるではないかキミー! さあさあこの調子でどんどん歌ってみよー!」
「メラ子ちゃんは歌わないのか?」
「私はちょっと喉の調子が悪くてね、私を気にせず歌いたまえ‼」
「そうか、わかったよ」
――ずっと大声出しているのにそんなわけないだろう。
そう思うが口には出さず、メラ子ちゃんが勧めるまま歌い続けた。
「堂々たる歌いっぷり! 見ていて気持ちよかったよ」
「それはどうも……喉いてえ……」
結局五曲ぐらい連続で歌うことになった。
さすがに疲れたし、のどもがらがらだ。
だが、ここに来てから一時間は経つかな?
「じゃあ、そろそろ聞かせもらおうか――あんたの正体を」
「え? やだなあ、この前も言ったじゃないか。私は氷ちゃんの知り合いだよ」
「――知り合いどころじゃない」
メラ子ちゃんが飛び上がった。
それもそのはず、突然土屋さんが部屋に入って来たのだから。
実はこっそり土屋さんに場所を連絡し、時間を稼ぐよう指示を受けていた。だからメラ子ちゃんに文句も言わず歌い続けたと言うわけだ。
「こ、氷ちゃん⁉ なんで? 今日は用事があったはずでしょ⁉」
「急いで終わらせたの――ところで一体何をしているのかしら、姉さん?」
「姉さん⁉」
今度は俺が飛び上がった。
土屋さんに姉がいたことも驚いたが、まさかメラ子ちゃんだったとは……!
「こ、これはそのー、氷ちゃんが心配で――」
「………………」
「あう……」
土屋さんが怒っているところ久しぶりに見た。
冷たい視線にあのメラ子ちゃんがたじたじになっている。
「ご、ごめんよ氷ちゃん。彼が氷ちゃんを助けてくれたのは知っていたけど、どうしても気になっちゃって――」
「姉さん、謝る相手が違うでしょ? 姉さんが迷惑をかけたのは誰かしら?」
メラ子ちゃんは俺に向かい合うと正座をし、掌と額を床に付けた。
「この度は私の身勝手で迷惑をかけてしまい、真に申し訳ありませんでした」
所謂土下座だった。
さすがに土屋さんのお姉さんに土下座させ続けるのはまずいと、急いで頭を上げるように言った。
「私からも謝るわ。ごめんなさい鈴木君、姉さんが迷惑をかけてしまって」
「いや、俺も楽しかったからもういいよ」
メラ子ちゃんは立ち上がると、再度申し訳なさそうに頭を下げた。
「ところで今から鈴木君の家に行ってもいいかな?」
確かにここから遠くはないが、突然どうしたのだろうか?
「ちょっと訳があって、落ち着いて話すなら誰かの家がいいと思ったの……」
特に何もないので快く了承した。