転校
あれから数か月たった。
俺の傷は幸い浅く、退院するのに時間はかからなかった。
あの後すぐに田中は捕まり、うちの高校は休校に追い込まれた。
生徒のほとんどは近くの高校に転校することになったが、色々ありすぎた環境から離れるため、俺と土屋さんは少し離れた別の高校に転校した。
一応猫矢さんも一緒だ。
「人をついでみたいに言わないでくれませんか?」
両親は海外から帰ってこれなかったが、引っ越しする際の手続きや費用は全て負担してくれた。
引っ越しする際の荷物の整理は土屋さんと猫矢さんだけでなく佐藤先生も来てくれた。
学校の対応で忙しいはずなのに手伝いに来てくれただけでなく、俺達に謝ってくれた佐藤先生は本当にいい人だと思う。
別れの時は少し泣いてしまった。
猫矢さんは号泣していた。
「だからいちいち私を引き合いに出さないでください!」
そんなこんなでようやく落ち着いた学校生活が帰ってきた。
今、俺の横を土屋さんが歩いている。俺に微笑みかけてくれる。
胸が高鳴り、つい恥ずかしくなって顔をそむけてしまう。
そんな情けない俺の手を掴み、土屋さんの顔が目の前に迫る。
「私、鈴木君と一緒で幸せだよ」
高校一の美少女で孤高の存在だった土屋氷。
俺の中で彼女は憧れの存在ではなく、共に歩く存在に変わっていた。