外食
ある日の放課後、俺たち三人はファミレスに来ていた。高校近くにあるため、俺たちと同じく学生服の生徒が散らほら見える。
こうやって友達と外食に来るなんていつ以来だろうか、何故か目から汗があふれ出そうだ。
「何ボ―っとしていますの? さっさと注文を決めなさい」
「え、ああごめん。じゃあハンバーグ定食にしようかな」
「それじゃあ呼び出しボタンを押すね、えい」
「土屋さん、それ醤油入れだよ」
「……えい」
「何事もなかったかのように押し直した⁉」
「うるさいですわよ、お姉さまの行動に文句があるなら私が許しません」
「理不尽!」
今回外食を提案したのは猫矢さんだ。曰く、毎日俺の食事を作っていれば土屋さんの負担が半端ではないので、少しでも減らしたいとのこと。一度言い出したら聞かない土屋さんだが、二人がかりの説得でようやく折れてくれた。
注文を終えたところで微かなざわめきが。顔を向けると、会いたくなかった連中の顔があった。
「てめえら……」
不良グループだ。どうしてこんなところにいるんだ、確か謹慎中のはずでは。
「貴方達どうしてここにいるの?」
「謹慎だからって飯を食わねえわけにはいかねえだろうが。安心しろ、騒ぐつもりはねえよ。ところで鈴木――」
自然と身構え、手を強く握っていた。
あんなことが合ったばかりだ、何を言われてもおかしくはない。
「あの時は悪かった、てめえがあれほど男気のあるやつとは思わなかった」
予想外の言葉に目が点になる。
謝っただけではなく俺を認めただと? 佐藤先生の説教すごすぎだろ。
「先生の説教は関係ねえ、俺たちは土屋さんと一緒にいるてめえに嫉妬していたって気づいたんだ。気に入らねえから痛めつけてやろうとしたが、まさか立ち向かって来るとは思わなかった」
あの時は土屋さんを守りたい一心だったが、彼らにはそれが勇ましく見たのだろう。
「てめえがいると飯がまずくなる。俺たちは別の店に行くよ」
気まずそうに不良グループは店を後にした。もしかしたら俺たちに気を使ったのか? いや、好意的にとらえすぎか。
「なんですの今の人たちは。自分の言いたいことばかり言って、すぐに逃げるなんて」
「もう気にしていないからいいよ。彼らなりに反省していると思う」
「おまたせしました。ハンバーグ定食になります」
不良グループはもう何も言ってこない。そんな気がした。
――――
――
「ふう、お腹一杯ですわ」
「一杯食べたね、手作り以外のご飯を食べるの久しぶり」
「そうだね、あはは」
脳裏に冷凍食品が過る。ファミレスの料理も似たようなものだが、笑顔の土屋さんには口が裂けても言えなかった。