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ぼっちの俺が助けた相手は学園一の美少女でした。だけど世の中いい事ばかりじゃない  作者: どじょっち
ぼっちの俺が学園一の美少女を助けてしまった
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怒り


「お姉さま、おはようございます! ついでに鈴木もおはよう」

「おはよう猫矢さん」

「お、おはよう」


 次の日の朝、特に体調も悪くなかったので土屋さんと登校した。一日休んだらと言われたが、ただでさえ勉強が遅れているんだ、多少無茶をしてでも追いつかなくては。


「それにしてもお姉さまを守るためとはいえ、よく不良たちに立ち向かいましたわね。少し見直しましたわ、友達とはいえ無味無臭の味気ない乾ききった干物野郎と思っていましたから」


 不良たち以上にひどく見られていた。ここまでくるといっそ清々しいよ。

 にゃははと笑っていた猫矢さんは、土屋さんのチョップを額にくらい、もだえることになった。

 不良たちは謹慎処分になったらしいし、しばらくは落ち着いて過ごせるかな?


 ――それが甘い考えだと知らしめられたのは次の日だった。 


「……嘘だろ」


 下駄箱の靴がずたずたに引き裂かれていた。


「どうしたの?」

「いや靴を忘れてきたみたいなんだ。先生に説明してスリッパ借りるよ」


 土屋さんには知られたくない、彼女は自分自身を責めてしまうだろう。

 だから考える暇を無くすため、早く教室へ向かうよう働きかけたが、結局職員室まで付いて来てしまった。


「おや鈴木くん、おはよー。どうしたねー?」


 田中先生がにこにこ笑顔で迎えてくれた。

事情を説明するとスリッパを貸してくれたが、お世辞にもきれいな物ではない。きれいな物は全部出払っており、あまり物しかなかったとのこと。何て間の悪さだ。

 先生に礼を言い、教室前に向かうが何やら喚き声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。


「これは猫矢さんの声ね? 急ぐわよ」


 勢いよく土屋さんがドアを開け、その後に続いた。


「お姉さま! す、鈴木……」


 教室に入ると、猫矢さんが雑巾片手に突っ立っていた。必死で何かを隠そうとしているが、そこは俺の席がある場所だ。

 嫌がる彼女を押し退けると、俺の机に以前と同じような落書きがされているのが見えた。今回は土屋さんの名前を使ったものが多い。


『土屋さんに近づくな』『土屋さんが迷惑している』『土屋さんの寄生虫』


 ところどころがにじんでいるのは、猫矢さんが消そうとしてくれたおかげなのだろう。猫矢さんに礼を言い、クラスを見渡すが一組の時と同じような反応だった。

 猫矢さん曰く、どれだけ問い詰めても犯人は見つからなかったとのこと。

 それはそうだ、こんな陰湿な手段をとる人物が堂々と名乗り出るはずがない。俺だけならまだしも土屋さん達を巻き込み始めたら――、

 ふと我に返り土屋さんを見ると、恐ろしいほど冷え切った表情だった。


「つ、土屋さん?」


 裏返った情けない声を無視し、彼女は俺の机を持ち上げ運び始めたかと思えば、自分の机と交換してしまった。


「ちょ、何してるの土屋さん⁉ そんなことしなくていいよ!」

「鈴木君が私のせいでこんな目に合っているなんて許せないわ。犯人が見つかるまでこの机は借りておくね」


 怒りに燃える土屋さんに俺と猫矢さんの言葉は届くことはなかった。授業のチャイムが鳴り、仕方なく席に着くと田中先生が教室に転がり込んできた。


「みんなおはよー今日もいい天気だねー……って土屋さん、その机は⁉」

「何でもありません」

「そんなわけないねー! 明らかにおかしいねー! ……こんなことをしたのは誰ですか⁉」


 田中先生が教壇を叩く音が響き、クラスが静まり返る。

驚いた、田中先生が怒るところなんて初めて見たぞ。

 だが当然誰も手を上げない、というより先生に怯えて誰も上げられないのが正しいだろうか。それほど今の田中先生は怖い。温厚な人ほど怒ると怖いと言うがまさにその言葉通りだ。

 永遠かと思うほどの長い沈黙の果て、田中先生がため息をつく。


「……探すのはいったん止めます。ですが、決して許しはしませんからねー?」


 その時、田中先生と目が合い、思わず息を呑んだ。余りにもその瞳が憎悪に満ちていたからだ。

 何事もなかったかのようにいつもの先生に戻ったが、さっきの印象が強すぎて授業がまったく頭に入らなかった。


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