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13人目の勇者  作者: ユウジン
第二章・エルフの国
9/10

女王陛下

「はっ!」


ガバッと体を起こし、大和は荒く息をする。慌てて周りを見回すと、見たことの無いベットと部屋だ。


何か前にも同じようなことがあったようなと、すごく既視感がある光景に思わず大和は頭を捻ると、


「あ、ヤマトさん!」

「ココさん!?」


ガチャリとドアが開かれ、入ってきたのはココだ。そう言えば彼女に助けられた時も、こんな感じだった。


なんて駆け寄ってくる彼女に思いつついると、


「あれ?でも確か俺はヴィーダってやつに……」

「よう」


ココが入ってきた後に続いて入ってきた男の声に、大和はヴィーダだと気づき、とっさに臨戦態勢をベットから飛び降りてしようとしたとき、


「ぷふっ!」


思いっきり吹いた。ココの方だけは向かないように首を捻った自分を誉めてほしい。


何せヴィーダの顔。青たん、引っ掻き傷だけにおさまらず、目元は腫れて鼻血を止めるためか、紙を突っ込みプピプピ音を出しながら呼吸している。折角の色男が台無しだ。


そして大和のそんな反応にヴィーダはムスッとしながら、


「何がおかしい……」

「いや、お前」


クククと笑いそうになりながら、大和はベットから降りて拳を握った。だが気づく。確か自分は足を負傷したはずだ。だが痛みがない。そう思い足をみてみると、包帯を巻かれていた。さらに、


「や、ヤマトさん!彼は敵ではありません。誤解は解けました」

「え?」


慌てて間に入ってきたココに、大和は驚きながらどういう事かとココとヴィーダを交互に見ていたその時、


「失礼します」


また誰かが入ってきた。そう思いながらドアの方を見てみると、思わず大和は息を飲んだ。


キラキラと反射する腰まで伸ばした金髪に、小さな体躯。そしてサファイアのような瞳が目を引く少女だ。まるでお人形さんみたいと言う表現は彼女の為にあるかのよう。


「え、えと……お嬢ちゃんはどちら様いっで!」


取り敢えず大和はしゃがみ、目線を合わせて話す。顔が怖いので怖がらせないようにと、言葉遣いにもと思って話したのだが、ヴィーダに拳骨を落とされた。序でに何故かココもアタフタしている。


「アホ!この方はあいっで!」

「アホは貴方です!」


だがヴィーダはヴィーダで、スパーンと少女のジャンピング脳天チョップによって悶える。


「全く貴方は!話も聞かずにヤマト殿をボコボコにするとは!」

「それでもヒューマンと亜人が一緒だぞ!?怪しむのが普通だろうが!」


おや?と大和は首をかしげる。自分がお嬢さんと言ったときはこの方は、とか言っていたのに、随分砕けた乱暴な口調だ。


「まあ確かに隷属の魔道具もなかったし、そういった魔法の痕跡は俺やお前がちゃんと調べてもなかったけどさ」

「ならまずヤマト殿に言うべきことがあるでしょう!?」


少女に言われ、ヴィーダは頭を掻きながら、


「すまん」


と素直に頭を下げた。それに大和は呆気に取られてしまいポカンとするが、ヴィーダはまたムスッとして、


「なんだよ」

「いや……まぁ俺も怪しかったとは思うし」


大和は色々言いたい文句もあったのだが、ここまでボコボコにされ、しかも隣の少女に謝らされてる光景を見ると言うのは、どうも調子がでない。だが、


「だよな。お前人相悪いし、ヒューマンだし疑った俺は仕方がないいえなんでもないですすいませんでした」


調子に乗ったヴィーダは、アッハッハと笑うが、また少女に睨まれて謝りだす。取り敢えず二人の力関係は分かった。すると、


「申し遅れました。私はカマンダ・ジャーファです。お話はココ殿から聞きました。ここまで大変な苦労をされたようで……」


聞いたってどこまで?とヤマトが首をかしげると、


「貴方が勇者としてアーバルト王国に呼び出され、魔力が無いため役立たずと捨てられ、彼女に拾われビーストのお世話になっていたと言うところからです」

「まあホントに勇者なのかは俺は半信半疑ではあるけどな」


勇者なのに魔力がない、でも普通のヒューマンにも大なり小なり魔力があるはずなのに、全く無いと言うのも可笑しい話だと、ヴィーダは続けて言う。


「ヴィーダ。彼女は嘘をついてませんよ」


しかしそれに対してカマンダは反論し、ヴィーダはなんで分かるんだと聞くと、


「あんの老害(糞爺)どもの相手をしてたらね」

「……」


今までの可憐な雰囲気はどこへやら……もの凄い口の悪さだ。余りの変貌にヤマトとココが目を丸くすると、カマンダはその視線に気づき、


「し、失礼なんでもありませんわ。おほほほほ」

「いや今更おせぇだろ……」


慌てて上品な笑いを浮かべて取り繕うが、ヴィーダの言うとおり今更遅い。だが彼が驚いた様子がないと言うことは、彼女の素はこっちなのか?なんて親近感を抱いた次の瞬間、


「頼むから女王陛下として居なきゃならんときはしっかりしてくれよ?」

「分かってますよ」

「え?」


ヴィーダの言葉に頬を膨らませるカマンダだが、大和は一瞬我が耳を疑う。しかしココはヤマトの様子に気づいたのか、


「カマンダ様はこのグリーンペンタゴンのトップである女王陛下ですよ?」

「えぇ!?」

「あとここはグリーンペンタゴンの中央にある本城です。あ、勇者はこの城から離れた場所にある屋敷に泊まってて、基本的に用事がある場合は向こうが、自分のところに来るように呼びつけてくるらしいので、鉢合わせる心配はいらないそうです」


待て待て情報が一気に来て、脳みそが処理しきれないんだが、と大和が困惑する中ヴィーダもそれに気づき、


「ま、あとこの客室は好きに使ってくれ。足の傷は薬草と包帯で治療したがまだ完治はしていない。旅に必要なものは揃えてやる。暫しゆっくりしていけ。クラバット王国への道のりはまだ長いしな」


詫びって訳じゃねぇか、そうしねぇとこいつがうるさくてな。とヴィーダはカマンダを指差す。


「誰うるさいですか!」

「昔からそうだ。面白そうなことに首突っ込んだり、お前のお人好しさに巻き込まれんのはいってぇ!」

「ですがこの件に関しては貴方が話を信じずにボコボコにしたのが始まりでしょうが!」


ヴィーダをぶっ叩くカマンダと、それに抗議するヴィーダ。さっきからの言葉の端々から気になっていたが、昔からと言うのは、付き合いも相応に長いのだろうか?等と思い、大和が聞くと案の定帰ってきた答えは、


「ただの腐れ縁だ」

「普通の幼馴染です」


であった。

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