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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

あの子は

あの子はただ欲しかっただけ。

掲載日:2018/02/23

あの子が欲しかったものは


どうか、私の罪を赦してください。


そう言いながら、懺悔室(ざんげしつ)に一人の修道女が入ってた。

しかし、

その姿を見て思わず目を見張った。



彼女は村の住民からは子どもたちに勉強を教えているため先生と呼ばれて

慕われている人だった。


僕自身も彼女に教えられていたので

思わず

「せんせい」

と言ってしまった。



「私は先生ではありません。

罪の告白をしにきた罪人です。」

けれど普段と違って感情のない冷たい声で返してる。




なんで先生が、

ここ一年ずっとベッドで寝たきりだった先生が

どうやって、なんでここにきたのだろう。

そう動揺しながらも、僕は言った。

「罪の告白をしてください。」




















私がまだ十代の少女だった頃、そうね

今から50年以上前のこと。

王都に昔からある貴族や商会の子どもが通う学園が

あるでしょう。

私はそこの生徒だった。


まあ、そんな驚かないで


と言っても、さっき言ったような貴族や商人の子どもではないの


私は平民の特待生だった。

表向きはね


本当は

貴族に母親の身分が低いから

認知されていなかった子どもだった。


父親がそれでも、私を利用しようとしてきたから

私は、そこに

貴族の支援を受けて入学してきた平民の子

として入学させられたの


私が入学したときは特待生が二十人くらいいたけれど

私みたいな子は一人もいなかった。


それだからか、

本当に優秀な彼ら彼女らからは浮いて

かといって貴族や商人でもないから私は

どこにも馴染めなかった。


私は憎んだな、そこに入学させた父親を


そう、一人でいながら

思っていたらね









あの子が来たの


あの子はね。身分が低い令嬢で体が弱くてしばらく、療養していてそれが良くなったから、

この学年に編入したの。


ふわふわの薄い茶色の髪、くりっとした目、白い肌にほんのりと赤い唇と頰


冴えない私と比べてはいけないと思えてくるほど

綺麗な子だった。


あの子は貴族や商人、特待生に関係なく話しかけた。


私にも話しかけて来たわ

私にはできないとても可愛い仕草と雰囲気で

ああ、あの子はすごいなと、思えた。







そんなある日、あの子とあの男が出来ていると言う噂が流れた。


噂に疎い私にまで聞こえてくるほどのもの

だから、もう、

学園中に広まっているんだなって思ったわ


あの男はあの当時の学園の生徒の中でも、

もっとも高い身分で

婚約者持ちだった。


私ねあの子に噂が本当かどうか聞いた。

そしたら、

「そうよ、あの人は

私を愛してくれるから。」

嬉しそうに目を潤ませながら言ってた。



その姿は物語の中にいる恋に落ちた少女そのもので、


けれど、あの男のことを語るあの子は

あの女に似ている気がした。


でもあの女とは違うと

私はあの子にあの女を重ねた私を諌めた。






しばらくしてから別の噂が流れた。








あの子はあの男の遊び相手の内のひとりだと、






私はこの噂が耳に入ってきたときは

本気で

あの子にあの男から離れるように言うつもりだった

けれど、


あの子が先に私に聞いてきた。

「私が遊び相手って噂は嘘だよね…」


私は、その時に正直に言えばよかったの。

でも、その時の彼女の顔があの女の顔に見えたせいでその噂は嘘だよと言ってしまったのです。


私はその時にちゃんとあの子に言えば、

何か変わったんじゃないかなとおもえるんです。



それからあの子は私に話しかけてこなくなりました。





私はあの子が

あの男とよく中庭に居るのを

よく見るようになりました。


あの子は、あの男と仲が良いのだと周りに見せつけるようになっていったの


あの子が話しかけこない間にも噂は聞こえてきた。


「あの子は、あの男の取り巻きたちにも

愛想を振りまいている。」




「あの子は、あの男の婚約者にイジメられている。」


そんな感じの噂が常に聞こえてきました。


そして、彼女が話しかけてこないまま


学年が上がって、そろそろ卒業式が近いなと思い始めた頃







あの夜、雨がザーザーと降る夜

あの子が私の部屋を訪ねてきたのです。

服が破け、顔には紫色に腫れた所があって

ずぶ濡れの姿で、


私はあの男の婚約者にイジメられたのかと

思い、とりあえずあの子を中に入れて話を聞くことにしたの。

そしたら、


あの子は濡れた姿でこう言ったの。

「私、あの人に捨てられたの。」


あの人は私が一番じゃなかった。

あの人は私以外にもいた

私はあの人を愛していたのに

あの子は繰り返して言ってた。


そして、しばらく繰り返した後に

こう言ったの

「なんで、私もお母さんと同じようなことになるのかな。」

ポツリと独り言のように私を見ながら言った。


私はそれを聞いた時


わかってしまったのです。


あの子は私と同じだと


私と同じように自分の父親の命令で

この学園に入れられたのだと


そしてあの子は私とは違ってそれに従っていたのだと。


あの子は私の方を見ながら言ったんです。

「私はお父さんやあの人に

愛して欲しかった。

愛されたかった。

お母さんと、違うって想いたかった。」


その姿はあの女、私の母親のようで

まるで、亡霊のように見えた。






母親は父親に愛されていると思っていた

母親は他にも同じようなものがいるのに

自分だけと思いたがった。


母親は私がそれを否定すると殴った。

私はそれが怖くて嘘をつくようになり、

私は、母親が死ぬまで嘘をつき続けた。


あのこが私に聞きに来た時

嘘だよと言ってしまったのはそのせいなの






気がつくと目の前からあの子はいなくて


部屋の窓が開いて、その向こうから


ドプン


と私の部屋の窓の真下にある池になにか

重たいものが落ちる音が聞こえた。


他の部屋にも、同じように聞こえたみたいで

なにが起こったの見るために窓を開ける人がいたわ

でも、その人たちは悲鳴をあげた。


そう、あの子が池に浮かんでいたの。


あの子が私の部屋から飛び降りたのだと

すぐにわかった。



その後すぐに学園の教師や色々な人がやってきて

あの子のことを聞いた。


「なぜ君の部屋から飛び降りた。」


それがよく聞かれたわ


私はそれにこう応えたの


「私にもわからない、

飛び降りるのならあの男の所からでもよかったのに」



あの女みたいに自分が愛した男の目の前で

死ねばよかったのに。







先生は今まで僕に合わせてなかった視線を

僕に戻していった。


「それで、私はそこを卒業した後、教会に入った。

実際は入れられたみたいなものだけれど。

私が犯した罪を償うために必要なことだったから良かったわ。」






僕は先生の告白を静かに聞いていた。


先生は話し疲れたのかそれ以上話さなくなった。


僕は、先生に言った。

「あなたは、嘘をつき続け、その嘘で

二人の人間を狂わせた罪は重いです。

しかし、あなたは神へ告白をしました。

よってあなたの罪は赦されます。

あなたは神の元に行けます。」


それを言い終わると


先生は僕に背を向けて

懺悔室から出て行こうと

扉に手をかけた


「先生、待ってください。」

本当は神父がこんな事を聞いてはいけないのはわかっている。

でも、僕は聞きたかった。


「なぜ、

先生は今まで告白していなかったのに

したのですか。」


先生は振り返って僕の方を見て


「これで、やっと私は

いけるから。」

そう笑顔で言った。


僕は思わず固まってしまった。


その間に先生は扉を開けて出ていった。


しばらく呆然としていると


バンッ


勢いよく扉を開けて年下の神父が、

息を切らしながら

入ってきた。

あまりに急いでいるようだったので何事かと思った。


彼は途切れ途切れに行った。


「先輩、探したんですよ。

こ、ここにいたんですか、

はや、早くきてください。はぁ












先生が


神の元に行った。」



本当は私も欲しかった。

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