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スクールカースト  作者: 久川梓紗
バレー部キャプテンと美術部少女
4/11

4

「じゃあ、席替えするぞー」


 SHRの時間、担任の先生がいきなり前置きもなく言ってきた。


「よっしゃー!」

「えーこの席結構気に入ってたのにぃ」


 賛成するものも批判する者もいる。それらを構わず先生は話を進める。


「くじを作ってきたから男子は男子で、女子は女子で引いてけよー」


 1番前の席に座っていた男女1人ずつにくじが入った箱が渡され、渡された生徒達が一人一人にくじを引くよう促す。


 この一通りの光景を見たあの双子がほくそ笑む。

 彼らにとってこの席替えは意想外だったが、知らぬ間に彼らの筋書き通りになっていたので無駄な手間が省けたと言うものだ。




 席替えが終わり、一斉に皆が席を移動する。

 裕希は運悪くも教壇の真ん前で机に額を擦り付けて目をつぶっている。流石にそこではスマホを弄れないと理解したのか、目を開ける素振りも見せない。


 裕人と言えば、裕希のいる列の1番後ろの席になった。机に伏せている裕希にざまぁみろ。と言った感じでニヤニヤと笑っている。



「おーおー、水無瀬弟のやつ落ち込んで俯いてるぞ」


 裕人に1人の男子生徒が話しかける。

 先日裕人たちと話した山口だ。

 どうやら裕人の前の席になったらしい。


「そうみたいだな。あいつ、昔からくじ運は良くないから」


「へぇー、そうなのか」


 双子も運勢は違うんだなー。と山口は裕人の方を見ながら言う。


「山口はいつも席、後ろの方だよな」


「あーそうだな。俺、運いいほうなんだよ」


「君は授業中とかにもスマホいじる人?」


「そんな頻繁にじゃないけどたまになら」


「へー意外。全くいじらないのかと思ってたよ」


 少し感に触ったのか、山口の眉が片方ピクリと動いたのが分かった。


「それはこっちのセリフだよ。君の方がスマホをいじっていそうなのに電源も切ってるそうじゃないか」


「まぁそれがルールだからね」


「ルールねぇ」


 山口がつまらなさそうに口にする。

 彼はルールとかそういうものに囚われるのが好きな方ではないのかもしれない。


「礼」


 女子の声が聞こえてきた。裕人はそれに気がついて周囲を見渡すと裕人と山口以外の全員が立っていて担任にお辞儀をしていた。


「「あ」」


 2人の声が重なる。けれど二人が立っていないことに気づいているものはいないのか、ごく普通に休み時間の時間となった。


 そして休み時間となってすぐ裕希が裕人の元へかけてくる。


「いつも裕人ばっかりずるいよ」


「くじ運のない裕希が悪い」


「教壇の真ん前とか首疲れるじゃん」


「お前、授業中寝ないもんな」


「裕人はどこの席であろうと堂々と寝てそうだよね」


「まぁな」


「褒めてないって」



 その様子を見ていた山口が「やっぱり君ら面白いよね」と笑いながら言った。


「山口ー。俺と席交換しない?」


 裕希が山口に迫るが「嫌だ」とすぐに返答が返ってくる。でも意外にも裕希は「だよねー」と声を漏らしただけだった。



「そろそろ時間になるぞ」


 裕人に言われた裕希は時計を確認する。


「あっほんとだ。じゃあ後で!」


 自分の席へと戻って行った裕希を見送り、裕人は授業の準備を進めた。



 それから1時間目が始まった。

 裕人は相変わらず寝ていて、先生の話を聞いている素振りさえない。裕希は開始20分で首が疲れたのか片手で首のマッサージをしていた。



 他の生徒達は特に異常がないのか普段通り授業を受けている。



「ちっ」



 小さく舌打ちの声が聞こえてきた。

 何に対しての舌打ちだろうか。それともただの空耳だろうか。それから今日の放課後になるまで舌打ちは1度きりしか聞こえてこなかった。



 

 放課後になった途端、裕希はスマホを弄り始める。そんな彼に1人の女子生徒が近づいてきた。



「水無瀬くん」


「君は確か……相川さんだっけ」


「初めまして」


「初めまして。俺になにかよう?」


「……1時間後、少し付き合ってくれないかな」



 相川香織あいかわかおり。美術部に所属していて長く綺麗な黒髪のロングヘアが印象に残る大人っぽく大人しい感じの女の子だ。



「分かった」



 裕希が一言返事をすると相川は嬉しそうに「ありがとう」と言った。



「1時間後、屋上で」



 彼女はそれを言ったっきりほかの美術部の子達と一緒に教室を出ていった。



「相川香織……確か、彼の___」



「おい、裕希」


「裕人」


いつの間に居たのか、裕人はリュックを背負って裕希の後ろに立っていた。


「何かあったのか?」


「いや、なんでもないよ。俺今日学校残るから先帰ってて」


「了解」



 裕人は「じゃあな」と軽く手を振って教室を出ていった。


 





「裕希が俺を引き止めないなんて」



 弟に帰ることを引き止められなかった双子の兄はぶつぶつ独り言を言っていた。



 イヤフォンを両耳にさし、耳に影響が出ない限りの最大音で聞いているため自分のその独り言が独り言レベルの声量になっていないことを裕人は気づいていない。



「何ひとりで喋ってるんだよ」



 目の前に山口が現れる。何を言っているのか自分に言っているのかさえ分からない裕人は無視しようとして無言で山口の隣を通り過ぎようとした。



「おいおい待てって」



 山口が、裕人の歩く道を塞ぎイヤフォンを片方外した。


「結構な音量で聴くんだな……」



 裕人からイヤフォンを外した途端音楽が聴こえてくる。



「どうでもいいだろ」



 裕人が外されたイヤフォンを元に戻そうとする。



「待て待て、なぁ。少しバレーしていかないか?」



「なんでバレーなんだよ」



「なんでって俺、バレー部だから」



 山口がニカッと笑う。

 企みも何もなく、ただ単に裕人を誘うように。



「……いいよ」


「サンキュ。今日試合しようとしたのに1人足りなくてさ、助かるよ」



 彼がなぜ裕人を、誘ったのかはわからない。けれど暇を持て余した裕人にとって丁度良いと思った。




「けど、なんか服貸して」


「りょーかいりょーかい」




 山口から借りた服は少し大きかった。けれど制服を着て運動するよりはマシなのでそのまま借りることにする。




「それじゃー始めるぞ」




 裕人が着替えている間にウォーミングアップは終わったのか、割と直ぐに試合が始まった。

 山口の合図にバレー部のマネージャーがホイッスルを鳴らす。




 裕人の今いるポジションはレフトという所だ。試合前山口に「どこがいい?」と聞かれ「レシーブよりはアタックの方ができる」と答えたため、レフトになったらしい。



 山口・裕人のいるチームは青のゼッケン。相手チームは赤のゼッケンを着ている。



 相手チーム、赤からサーブが始まる。

 流石バレー部とあってサーブもアタック並みの速さで飛んでくる。それを簡単に青チームの後衛陣の1人が受け止める。



「セッター!」



 ボールを拾ったであろう人の声がセッターの名を呼ぶ。セッターは山口だ。



「水無瀬!」



 水無瀬は山口の声を合図に助走をし、高くジャンプをした。

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