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スクールカースト  作者: 久川梓紗
バレー部キャプテンと美術部少女
2/11

2

「なぁ、知ってるか?祐希」


「なんだよ裕人」


「このクラスに“いけないやつ”がいるって」


「へぇーそれは面白そうだ」


「「それじゃあゲームを始めよう」」









「2人って双子だったの?!」


 ショートの髪をした女の子がまず声を上げる。祐希と裕人は包み隠さず「そうだよー」と返事をする。

 どうやら双子のことを隠すのは辞めたようだ。


「どっちがどっちだが、全然わからないな」


 男子が感想を漏らす。

 眼鏡を外した祐希。髪型も裕人と全く同じでどっちがどっちだが全くわからない。果たして、二人を見分けられる人はいるのだろうか。


「今まで隠しててごめんね」


 祐希が謝る。


「別にいいけどなんで隠してたんだよ」


 男子が聞き返す。


「……裕人と俺いつも見比べられるから嫌だったんだよね」


 祐希が涙目を浮かべる。もちろん演技だ。


「そういう事だったんだ……」


 祐希の演技にまんまと引っかかった女子が悲しめな目をする。勿論こっちも演技だ。


「そんなこと気にする必要ない。双子だけど違くて当たり前なんだから」


 裕人が言う。ちなみにこのセリフは二人で昨夜、考えた台本の一部だ。


「そうだけど裕人は何でもできるから」


「何でもできねぇよ」


「だって勉強も運動も人1倍出来るじゃないか」


「でも俺はお前みたいに絵上手じゃないし料理ができない」


 本当のことだが、ここでいう必要はなんだろうか。


「じゃあ、二人で人一人より完璧ってことだね」


 女子が嬉しそうに言う。

 二人で人一人より完璧というのは話して良いことなのだろうか。しかし、彼ら双子の目的は完璧を求めている訳では無いからどうでも良いことらしい。


「そっか、そうだよ」


「裕人と一緒なら何でもできるってことだね」


 2人が手を組み合う。

 どこの兄弟愛マンガだよ。と直接突っ込めないのも残念だが、この筋書き。全て双子の思い描いた通りであった。



 




 放課後になって部活に入っていない2人は暇を持て余していた。

「あー暇だ」


「国際問題でもなるようなこと起きないかなー」


「それは流石にダメだろ」


「あ、やっぱり?」


 2人だけの教室はやけに静かだ。


「けどなーあと1時間も何してればいい?」


「スマホでもいじってればすぐだろ」


「電池40%しかないんだもん」


「うわっ、それは辛いわ」


 40%もあれば十分だと思うのはもう古い考えなのだろうか。いや、こいつらが依存しすぎてるだけだ。


「特に、今は減りが早いもんなぁ」


「ほんとに」


「何でこんなにも電池が早く無くなるんだろうねぇ」


「電波も悪いしこの学校最悪だよなー」


「ほんとほんと」




 ガラガラ

 鳥かご状態になっていた教室のドアが一つ音を出して開く。

 そこから顔を出したのはバレー部主将“山口やまぐち 鷹也たかや”だ。


「おや、バレー主将でイケメンな山口くん」


 裕人はやぁと手を挙げて山口に話しかけた。


「これは水無瀬兄弟。こんな時間まで何してたんだ?」


 山口が水無瀬兄弟に近寄りながら問いかける。


「ぼーっと過ごしてただけだよ」


 祐希が答える。

 そっか。と山口は興味なさげに言い、自分の席のところに向かう。


「山口くん、スマホ忘れたの?」


 山口が自分の席からとったのはスマホだった。それを見逃さなかった裕人は躊躇なく質問する。


「え、あぁ。そうなんだよ」


「ふーん、俺らと違って依存してないのか。羨ましい」


「君ら依存症なの?」


「そうなんだよ。40%しか無いってだけでヒヤヒヤだよ」


「やばっ!もう15%なんだけど。死ぬっ!」


「祐希ちょっと黙ってて」


 山口と裕人の会話を祐希が悲鳴をあげて遮い、裕人は祐希を睨みつけると「ごめん」とシュンと耳をたれて彼は謝った。


「君ら面白いね」


 山口が二人の座っていた席の近くに座って彼らに興味を示している様子だ。


「面白い?俺らが?」


「あぁ。見てて飽きないよ」


「僕らは会話だけでも安くないよ」


「買わないさ」


「ケチだなぁ」


 裕人がブーブーと不満を口にしていると山口が「当然だろ」と笑いながら言った。

 祐希がスマホをいじり出す。そしてまた案の定騒ぎ出す。


「やばいやばい!あともう7%しかないっ!!ねぇ、どっちが充電器持ってない?!」


 祐希が裕人の両肩をつかみガタガタと上下に揺さぶる。


「俺は持ってないけど、確かに山口が持ってるんじゃないか?」

「ほんと?!山口!」


「いや、俺は……」


「さっき、スマホと一緒に取り出してなかったか?」


 裕人がすかさず言う。

 あー、それが。と困った顔を見せて山口は答えた。


「ずっと受電していたからもう充電の電池もないんだよ。ごめんな」


「そんなぁぁ」


 祐希がへなへなと倒れ込む。本当にこのまま死んでしまいそうだ。


 ♪♪


 誰かの着信音がなる。


「あ、俺だ。やべぇもう帰んないと」


 山口が携帯を取り出して着信を確認したあとカバンに戻した。


「じゃあな」


「うん。じゃあねー」


「……じゃあね」


 山口は教室から出てく。

 それから裕人が祐希に問いかける。


「てか、祐希お前、自分の充電器持ってねぇの?確か2個あったろ」


「あ!」


 祐希がごそごそと自分のバックをあさる。


「あ!あった!!」


 充電器を見つけた途端すぐにスマホに繋げた。


「良かったー!2%残ってた」


「はいはい。良かったなー」


 裕人が自分のスマホをいじりながら適当に返す。どうやらツムツムをやっている様子だ。

 ツムツムとは人気キャラクターが可愛らしい丸いマスコットになって並べて消していく言わば人気のアプリゲーム。

 最近裕人はそれにハマっている。暇さえあればいつもそれだ。


「裕人は電池減ってないのー?」


「俺はお前みたいに授業中に電池つけてないからな」


「そういう所はえらいよね。寝てさえいなければ」


確かに祐希は授業中スマホに電池をつけて入るが実際そんなにいじっていない。ただたんにそばに無いと落ち着かなく電池を消すのが面倒なだけだ。


「授業なんて最高のベッドだぜ」


 裕人がツムツムをやりながら返答する。多分、ツムツムをやっていなかったらとても間に触っていただろう。

 裕人の事だがら絶対自信満々にドヤ顔をするだろうから。


「それで学年一位なんだから本当に神様は不公平だよね」


 祐希はやれやれと肩を上げながら手持ち無沙汰になった手をペン回しで誤魔化す。

 祐希は小学校の頃から暇な時にペンがあったらずっとペン回しをしていたから結構上手い。速いし三回転ぐらい中に回してから続けて回し続けることが出来る。

 中学の時授業中にそれをやっていて教師によく怒られたものだ。


「けど、お前だってキャラ作り終わったんだから一位取れるだろ」


「まぁね」


 本当に神様は不公平だ。こんな兄弟にとても良い頭脳をやるならもっとちゃんとした子にそのとても良い頭脳をあげてやってくださいよ。そしてそのこの性格をこの2人にほんのちょっとでもいいんで分けてあげてくださいよ。きっとこのままだとこの2人ろくな大人に慣れませんよ。


「さぁて、そろそろ帰るか」


 ツムツムのライフをすべて使い終わった裕人が動き出す。

 それを見て祐希は自分のスマホの電池量を確認する。


「あ、35%になった。このぐらいなら帰ってもいいかな」


「ぅんじゃあ帰るぞー」


 そう言って2人はぞろぞろと帰って行った。

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