スクールカースト
「あいついつも1人だぜ?」
「しょうがねぇだろ。友達がいねぇんだから」
「あっそうかー!そうだよなぁ」
煩い虫が騒いでいる。ただ、それだけの出来事だ。
「ねぇ。今日遊びに行かない?」
「ずるい!私とだよね!?」
「何言ってるの!私となんだから!」
醜い豚が暴れている。ただ、それだけの出来事。
『しかし、もう飽きたな。この設定』
夏休みが終わり、髪が鬱陶しくなる。
暑さに苛立って髪をくしゃくしゃにかいている裕人の肘がダサい眼鏡をかけた男の顔に当たった。
「わりぃ」
ダサい眼鏡が床に落ち、長い前髪で隠れている瞳が少しだけ伺える。
(あー、こいつ怒ってるわ。)
「気をつけろ」
暑臭い前髪を瞳に被せ、男はまたダサい眼鏡をかけた。
男は自分の席に向かおうと背を向ける。
「おい、祐希」
裕人と同じくらいの背と同じような髪質に髪色。そして透き通った肌に細いわりに引き締まってる筋肉を持つ男はため息をついて裕人を見やる。
瓜二つのように思える二人は家ぶりに顔を見合わせた。
ダサいくて頭が悪いと有名な祐希と、かっこよくて頭が良いと評判の裕人。
全く同じカーストではない2人が二人っきりの教室で顔を見つけ合う。
そして、ただ、一言。
『飽きたな』
スクールカーストとは……
学校のクラス内で、勉強以外の能力や容姿などにより各人が格付けされ、階層が形成された状態。階層間の交流が分断され、上位の者が下位の者を軽んじる傾向があることから、いじめの背景の一つともみなされている。インドのカースト制になぞらえた語。学級階層。
(コトバンクより)
水無瀬裕人と水無瀬祐希は、実の双子である。
だが、それを知るものは二人が通う学校には先生含めず一人しかいない。
祐希と裕人は楽しむことを第一とする。
そして二人が目をつけたのはスクールカースト。
よく分からない思考だが、最上階と最下階。
普通の人間はどちらも体験するのは困難だ。
皆さんにはお分かりだろうかもしれないが、人は容易に自分を変えられないのだ。
もし、顔は良くて頭はダメだったとしよう。
これでは、最下階にはならない。
しかし、顔はよくて頭がよければ最上階には登れる。
では反対に顔が良くなければ?
頭が良くても最上階には登れない。
しかし、頭が悪ければ最下階に落ちる。
とても簡単に格差が出来上がる。
けれども人間は人のイメチェンというものを良いものばかりに感じない。
今まで暗かったやつが明るくなれば「前はあぁだったろ?」と、言い返す。
知ってる人に自分を変えたことを素直に受けてもらえるには信頼が必要だ。
と言うことで、この兄弟は格好を変え、頭脳にわざと差をつけ、最上階と最下階を作りあげた。
そして、二人が作り上げだクラスのスクールカーストが出来上がりつつあったが……。
『つまらん』
二人のその一言で今まで固まりつつあったスクールカーストは崩れ落ちる。
たかが40人。
誰でも二人が力を合わせれば、スクールカーストなど化けるのは時間の問題だ。