恋愛実践録98
「私はそう思うわ。油断大敵なのよ」と愛人は旦那を諌めた。
蜜月生活に戻った旦那と愛人が会話する。
苛立つように旦那が尋ねる。
「まだ内通している奴、特定出来ないの、姫?」
愛人が答える。
「尻尾を出さないのよ。何かいい方法は無いかしら?」
「疑わしき者は罰せず ではなく、疑わしい者を全部罰するというのは?」
愛人が訝る。
「それはどういう事?」
旦那が語気鋭く言い放つ。
「疑わしい奴を全部クビにすればいいんだよ。そして新しい連中を補充すればいいのさ」
愛人が悍まし笑みを頬に湛え答える。
「それじゃ全員クビを切る事になるじゃない。その後補充した者達も、この状況じゃ全員信用なんか出来ないから、それじゃ無限大にクビを切らないとならなくなるわよ。そう思わない?」
旦那がしきりに頷き答える。
「そうだな。人なんか誰も信用出来ないからな。姫の言う通り、疑心暗鬼にかられていったら、全員クビ切りだな…」
愛人が我が意を得たりと頷き言う。
「でしょう。そんな事したら、逆に本妻の思う壷なのよ。物事と言うのは的確正確に把握していかないとね。勝てる戦も負け戦になってしまうじゃない?」
「この状況は女房の仕掛けて来た分断工作という事か?」
愛人が恭しく頷き言った。
「私はそう思うわ。油断大敵なのよ」




