恋愛実践録93
「今度こんなミスを冒したら、貴方はクビよ。分かったら、下がりなさい」と愛人がボディーガードの長に言い放った。
ホスト亭主が救助されたの一報を聞き、愛人がボディーガードの長に眼を剥き怒鳴る。
「当日、本妻側にガードはいないと貴方は言っていたじゃない!」
苦し紛れに長が答える。
「ええ、本妻の行動は逐一チェックし、入念に調べ上げ、あの日も相手方にガードがいないと部下が調査報告して来たものですから。すいません…」
愛人がけんもほろろに怒鳴り散らす。
「本妻の影を連れて行くという奇妙な申し出に翻弄されて、眼を奪われ、油断して貴方の部下が敵を見落としたのよ。これで相手方はあのリンチの模様を逐一録画して、勝ち目のカードを握った訳になるじゃない!」
長が深々と頭を下げ謝罪する。
「虚を突かれて油断していた事は認めます。本当にすいませんでした」
愛人が深呼吸して怒りを呑み込み言い放つ。
「警察系のトップクラスには手を回してあるから、今回の事で敵がカードを握ったからと言って、直ぐに逮捕者が出る事は無いけれども、こんなミスが何回も続いたら、第三者的な伏兵が現れて、逮捕者が出るのよ。その意味は分かるでしょう!」
長が恭しく頷き再度謝罪する。
「本当に申し訳ありませんでした」
愛人が長を睨みつけ、引導を渡すように冷酷な口調で言った。
「戦術を見直さなければならないじゃない。今度こんなミスを冒したら、貴方はクビよ。分かったら、下がりなさい」




