恋愛実践録91
妻が帰った後、ホスト亭主は充血した目頭をひとしきり指で拭い、客の顛末を見届けたのかどうかを、ベッドの上で自問自答して行く。
妻が帰った後、ホスト亭主は充血した目頭をひとしきり指で拭い、客の顛末を見届けたのかどうかを、ベッドの上で自問自答して行く。
「抵抗せず、喋らずの影に徹する事は出来たが、結局痛みに気絶してしまい、客がどうなったのかを的確に把握出来てはいないじゃないか。それは取りも直さず、見届けてはいないという事に繋がらないないか?」
「だが客は誰かに救急通報させて俺を助けてくれたし、これ以上俺をこの泥沼戦に関わらさない為の影になって見届けろという措置ならば、客が気絶した俺を気遣って救急隊を呼んでくれた事が見届ける事になるだろう。違うかな?」
「それはどういう意味だ?客は罠に嵌まった振りをして、逆に敵に罠を仕掛け、奴らと一緒に去った後、誰かに救急隊を呼ばしたという事は、裏返って、客の作戦はとりあえず成功しており、それがお前が見届けたという事柄に繋がっているという事を言いたいのか?」
「そうだ…」
「ならばやはり客はお前を利用しているに過ぎないのではないのか?」
「いや、戦争の道具に俺を有用に使った事は間違いない事実だが、結果として客は俺をこうやって助けてくれたし。利用しているだけではないと思う」
「こんな形でお前に事の推移を見届けさせ、痛い思いをさせて、もうこれ以上この乱痴気騒ぎに関わるなという客の警告、気遣いは確かにあるという事か?」
「そうだ…」
「そんな形での客の気遣いがあるにせよ、これからお前はどう立ち回るつもりなのだ?」
「身体を直し、現場復帰した後音無しの構えで静観し、様子を窺うしかあるまい…」




