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恋愛実践録8

「無意識にご飯作ってしまったり、掃除してしまったりして、幸せを壊さないようにしているから、私はあの頃の幸せにさよなら出来ないと言うか、幸せな時に止まっていて、そんな時と離婚出来ない馬鹿な女なのですよ…」と客は言った。

眼を充血させたまま客がホスト亭主に質問をする。





「奥さんが料理、作ってくれるのですか?」




不意に話題が変わったので、ホスト亭主が戸惑うのだが、頷き、正直に答える。





「ええ、作ってくれますよ…」





「作ってくれた料理全部平らげますか?」





「胃の調子と言うか、体調によりますね。平らげる時と、残しちゃう時とまちまちです…」





心の震えを消すように客がシャンパンを一口啜り飲んでから言った。





「奥さん幸せですね。料理作っても食べてくれる人がいつも傍にいて。私なんか癖でいつも三人分作るのだけれども、誰も食べてくれないから、全部捨ててしまうのです」





咄嗟に恋狂いという言葉が脳裏に浮かび、ホスト亭主は固唾を飲み絶句した。




客が続ける。





「私は幸せだった過去と離婚出来ないのですよね。あの頃に膠着して時間が止まったままで、今の寂しい現実を直視出来ないから、離婚に踏み切れないのです…」





伏せた瞼のままにホスト亭主が質問をする。




「でも、たまには旦那さん帰って来るのでしょう?」





客が軽く首を振り言った。





「電話連絡があるだけで、殆ど愛人宅にいるから別居状態です。だから私過去の幸せだった頃のまま時間を止めて、ご飯作ったり、その頃と同じ環境と言うか家具や小物に至る配置を崩さないように掃除したりして、旦那や息子が帰って来るのを待っているのですが、時間は逆戻りしないのと同じく二人は帰って来ません。でも私はあの頃の心のままだから、無意識にご飯作ってしまったり、掃除してしまったりして、幸せを壊さないようにしているから、私はあの頃の幸せにさよなら出来ないと言うか、幸せな時に止まっていて、そんな時と離婚出来ない馬鹿な女なのですよ…」

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