恋愛実践録79
客が旦那の申し出を受け入れた。
旦那が告げる。
「さあ、どうする。この条件飲むか、飲まないか、どちらにするんだ?」
客が念を押すように言う。
「私が申し出を受け入れるならば、あの人の命助けてくれる保障はあるのですか?」
旦那が余裕の呈で微笑み答える。
「ああ、保障するぞ。お前が受け入れ次第、俺達はこの別荘をお前を連れて出るからな」
「あの人を置き去りにして?」
旦那が頷き答える。
「そりゃあそうだ。奴は電話を持っているからな。例え歩けなくなろうとも、電話で救急隊を呼べば、命が無くなる事は無いじゃないか。違うか?」
客が猜疑心たぎる眼差しをしてから尋ねる。
「こんな山奥で歩けず、電話が無ければ生きていられません。本当に電話を置いていってやるのですか?」
旦那が苦笑いしてから答える。
「俺はそこまで姑息では無いぞ。それはお前が一番知っている事じゃないか?」
客が言下に言って退ける。
「姑息だからこそ浮気をしたのだし、私は貴方を信じる事は出来ません」
旦那がどす黒く苦笑いしてから念を押し尋ねる。
「そんな事はどうでもいい。奴の風前の灯命は、今俺が握っているのだ。さあどうする?」
客が寸暇黙考してから答える。
「分かりました。私がこの別荘を出る時、あの人が電話を持っているかどうか確認してから出るという事で、申し出を受け入れます」
旦那がしてやったりとした顔付きをしてから答える。
「分かった。では合図を送るとしよう」




