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恋愛実践録75
「お前が俺の申し出を断れば、あの影は撲殺されて死ぬし、お前が俺の言いなりになれば、あの影の命は助けてやると、そう俺は言っているのさ」と旦那は客に優しく語りかけた。
立ち上がり、旦那が客を睨みつけ、尊大なる態度とは裏腹に優しげに告げる。
「今隣では、お前の愛しい影がリンチを受けて、じっと耐えている。そのリンチを止められるのはお前の態度いかんに掛かっていると言う事なのだ。この意味は分かるか?」
客があくまでも抵抗を貫くように首を小刻みに振るのを見てとり、旦那が悪魔じみた笑みを頬に湛え言った。
「ふん、強情な女だな。話しは簡単だ。お前が俺の申し出を断れば、あの影は撲殺されて死ぬし、お前が俺の言いなりになれば、あの影の命は助けてやると、そう俺は言っているのさ」
客が動揺し、しきりに瞬きを繰り返す様を見て、旦那がここぞとばかりに畳み掛ける。
「さあ、どうする。俺の言いなりになるか。ならないか。お前はどちらにするのだ?」




