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恋愛実践録72

「影に徹して、貴方が事の全容を見届けようにも、貴方自身がこの世から消え失せたのでは、役割貫徹にはならないわよね」と愛人はホスト亭主に言った。

目の前で展開する凄惨なるリンチに愛でるようにわざとらしい拍手を贈り、愛人が言った。





「影さん、隣の乱痴気騒ぎものっぴきならない状況のようだし、そろそろ音を上げてナイトによろしく、お助けモードに入ったらどうかしら?」





ホスト亭主は蹴りに依る乱打で苦悶の表情を浮かべ、激痛にのたうちまわっているのだが、客との約束を違わず、一切声を出さず抵抗もしない姿勢を崩そうとはしていない。





ボディーガード達の蹴りは故意に足腰に集中しており、愛人の言葉とは裏腹にけして致命傷を負わせず、徐々になぶるリンチの様相を明らかに呈している。




愛人が残忍にほくそ笑み言った。





「影に徹して、貴方が事の全容を見届けようにも、貴方自身がこの世から消え失せたのでは、役割貫徹にはならないわよね。見届けると言う任務を貫徹するには影本来の道、則ち主人に寄り添って、その任務遂行をしなければ駄目でしょう。でもこのままリンチされて行けば、貴方の足腰は立たなくなり、ご主人様の本に戻れなくなるわよ。それでもいいの、影さん?」





返事をしないホスト亭主に一番長身のボディーガードが続け様に蹴りを入れ、ホスト亭主は顔をしかめ、苦悶の表情を顕しつつも、歯を食いしばって声を出すのを何とか堪えている。




そんな凄惨窮まりない状況が何時果てるともなく続いている。

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