恋愛実践録71
殴っても無意味なのを悟り、再び旦那はその場に平伏し、豹変、土下座して泣き落とし戦術に切り替え、声を限りに喚いた。
旦那が信じられないような大声で客を威嚇する。
「てめぇ、俺を許さないと、本当にぶっ殺すぞ。てめぇなんか所詮俺の飼い馴らした雌豚に過ぎないのだから、ここで八つ裂きにしてミンチにしても構わないのだ。雌豚め!」
脅されても涙ぐむだけで、怯みはせず、客が気丈に言い放つ。
「貴方の命令に従う筋合いは私にはありません」
旦那が眼を剥き、振り上げた平手を打ち渾身の力で振り下ろした。
肉を打つ音が上がり、客の涙が飛び散ったのだが客は臆す事もなく、旦那を真っ直ぐに見詰め、一切視線を外そうとはしない。
それを見て、旦那が力任せに矢継ぎ早に平手打ちをかますのだが、客は声も上げず痛みを堪え、ひたすら旦那を睨み据えている。
殴っても無意味なのを悟り、再び旦那はその場に平伏し、豹変、土下座して泣き落とし戦術に切り替え、声を限りに喚いた。
「すまない。つい激昂してしまって、手を出してしまったが、それもこれも俺がお前に心底惚れている証拠なんだ。だから頼む、こんな俺を許してくれ。俺はお前の処に戻るしか行き場が無いのだ。頼む!」




