恋愛実践録68
「あら、声も出さないわ。本当にこの影本物の影なのかしら。もっと皆で踏んでみてよ!」と愛人がボディーガードに愉快そうに命じた。
愛人がボディーガードに話し掛ける。
「影と言うのは、常に寄り添っているだけで、人まねしか出来ないでくのぼうで、喋る事も手を出す事も出来ないのが存在理由ならば、あそこにいる影は確かに私にも見えているけれども、本当に影かどうかは分からないじゃない。主人と離れた影なんか聞いた事は無いし。あれが本当に影なのか、貴方方試してみて欲しいのよ。どう私の言っている事の意味分かる?」
スキンヘッドのボディーガードが尋ねる。
「それは影踏みをしてみろと、お嬢さんはおっしゃっているのですか?」
愛人が残忍な笑みを頬に湛え答える。
「そうそう影は踏まれようが、蹴られようが、何をされても声は出さず、抵抗出来ない物でしょう。私はそれを見たいの。証明してみてよ?」
スキンヘッドのボディーガードが苦笑いしてから、おもむろに言った。
「そうですね。影ならば踏んでも蹴っても抵抗はおろか、声も出せない筈だから、一度影踏みしてみますか」
愛人が命じる。
「やってみてよ」
スキンヘッドのボディーガードが「はい」と返事してから、おもむろにホスト亭主に近寄り、いきなりホスト亭主の太股に蹴りを入れた。
ホスト亭主は激痛によろめき倒れそうになったが、辛抱して態勢を立て直した。
それを見て愛人が嘲笑い愉快そうに言った。
「あら、声も出さないわ。本当にこの影本物の影なのかしら。もっと皆で踏んでみてよ!」




